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実験中、365日経過。 [日々雑録]

こんなにも長く濃い365日。

それなりの失望もあり、それなりの疲労困憊の日々、ではあったけれども。

自分の中に生きつづける「少年」を、毎日はっきりと感じながらの365日。

未来の僕は出会いました。すべて感謝しています。


彼が秘め続ける永遠の灯を、どんなにオッサンになっても爺さんになっても、

果たして燃やし続けることができるだろうか。

僕の人生は、その実験のようなものなのかも知れません。

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365日経過後の緑川憲仁。遺影にぴったりな出来映えです(笑)
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泥中に咲く蓮のように [日々雑録]

岡村孝子さんの「T’s GARDEN」というコンサートへ行ってきました。
長らく演劇業界で仕事をしていますので、
一度も行ったことのない劇場というのは随分と少なくなりましたが、
今回生まれて初めて行く千葉県松戸の「森のホール21」という劇場へ。
名前の通り、緑が揺れる森の中にある素敵なホールです。

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岡村孝子さんのような有名アーティストの東京公演なら、
アクセスしやすい大都市のホールで行なわれることがほとんどですが、
「あなたの街で岡村孝子がホームパーティーを開くので気軽に遊びに来てください」
といったスタンスで全国各地をめぐるアットホームな公演。
とても岡村孝子さんらしい企画です。

このブログでも何度か綴っていますが、
14歳の時から岡村孝子さんが紡ぐ音楽と言葉に導かれ続け、
劇作家となった今では、自身のアイデンティティーに関して、
「物書きとしての細胞はこの人の音楽と言葉によってかたちづくられている」
そう断言できるくらい、人生において切り離すことができない存在。
自身の活動が忙しくなってからは、長らく足が遠ざかっていたのですが、
昨年夏からふたたび、劇場に足を運んで、音楽と言葉の海に溺れるようになりました。

『夢をあきらめないで』がもっとも有名な岡村孝子さんの音楽は、
聴く人の心を優しく包み込み、励ます作品が多いのですが、
そういう曲を含めて、僕は気がつくと、その音楽と言葉の世界に「溺れて」います。
今も溺れています。
包まれているんじゃなくて、溺れているのでわりと苦しかったりもします。
どうしてなのだろう、と考えたこともありませんでしたが、
昨日は、森の中を歩いて帰りながら、苦しさの訳について考えました。

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ところで、僕自身の仕事である演劇作品の脚本や演出は、
言葉を厳選し、会話を起こし、シーンを作り、作品として組み上げていく、
という意味では多くの「選択」と「決定」を繰り返してゆく仕事なわけですが、
正直、音楽と比べると、とてもフォルムが曖昧でファジーな仕事です。
執筆、稽古の各ステップで、「ニュアンス」の幅を最小限まで狭めていきますが、
完全なる「点」になることは殆どなく、ある程度の幅を残します。
それが楽しかったり、時には歯がゆかったりする面白い表現スタイルです。

それにひきかえ、音楽って演劇よりもフォルムがかっちりしていて、
しかもレコーディングをして、それがずっと後世に残ってゆくので、
聴衆が耳にする作品の「完全性」は演劇の比ではない気がします。
その完全性を湛えた作品の奥に隠れている、
制作段階の「苦悶」や、「反動」や「裏返し」といった作者の核心がきっとあって、
僕はこの核心部分に向かって、無意識にズルズルと引き込まれ、
どんなに優しい歌声や旋律や言葉でさえも、凶器のように心臓に突き刺さる……、
緑川にとっての岡村孝子さんの世界は、そんなスパルタ的存在です(笑)。
もしかすると、多くのファンの方が感じるものとは随分と違うのかも知れません。


若い頃に生み出す作品というのは、人間としての葛藤をストレートに表現しやすい、
そんな特徴を持った創作時期なのだろうと思いますが、
経験を重ねて、後輩ができて、家庭を持って、親になって、、、
そんなふうに年を重ねてゆくと、人間としての葛藤は相変わらずたくさんあっても、
それをストレートに表現する機会やチャンネルがだんだんと失われていき、
逆に、周囲を勇気づけるとか、導くとか、模範になるとか、
表現者じゃなくとも、大人たちはそんな役割を求められていきます。
でも、大人だって、若い頃と同じように、あるいはそれ以上に葛藤し続けているんですよね。

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だから、作品という最終形として、どんなに優しく、どんなに柔らかな顔をしていようと、
その音楽が生み出される過程の苦しみに思いを馳せずにはいられません。
そんな気持ちを持ちながら、コンサートに足を運ぶと、
曲と曲のあいだのおしゃべりタイムが、とても奥深い時間に感じられます。
言葉ひとつひとつを選び、迷いながら、丁寧にお話をする姿に、
作品づくりの際に、きっといっぱい苦しんだであろう苦悶が重なります。
そんなことを感じながら聴く旋律や言葉に、溺れずにいられる訳がありません。
溺れているわけですから、とても苦しく、波の上へ浮かび上がりたい気持ちにもなりますが、
でも、このもがき苦しむ時間が、僕をここまで導いてくれたということを知っているので、
僕は岡村さんの音楽と言葉の海に溺れ続けているのだと思います。


岡村孝子さんもMCでこんなお話をしていました。

「『甦る』とか『Reborn(生まれ変わる)』とか、
あいつは何回生まれ変わるつもりなんだ、と思われるかも知れませんが……(笑)」。
まさしく、闇から光を目指して、苦悶しまくっているんですよね。

僕は、泥中に咲く蓮の花を思いました。

毎日心がささくれ立つ出来事もいっぱいありますが、
けっして腐らず、夢を抱いて、理想を追って、
困難に向き合って、どんなときも超えていきたい、
そんな勇気が湧いてきた夜でした。

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ついつい長くなってしまいました。。
岡村孝子さんの音楽の世界を考える時間は、
まるで自分自身の沼を覗き込む行為のようです。


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大河ドラマ『西郷どん』のルーツ、島津のくに [日々雑録]

とうふのかど
どういうわけか、子供の頃から桜島が大好きで、
桜島の写真や映像を見るだけで、元気がみなぎる僕にとっては、
鹿児島を舞台にした物語や鹿児島ゆかりの人物の物語は、格別の興味があります。
今年の大河ドラマ『西郷どん』も、鹿児島の匂いがムンムンしています。

鹿児島を訪れるとよく分かるのですが、一にも二にも感じることは「地域性」です。
もちろん、日本のどの地域にもそれぞれの地域性がありますが、
日本語圏ではあるものの、どうも日本ではないような異国性を感じる鹿児島。
そして、その中心に「ボス」のように鎮座しているのが桜島です。
かつて『島津の疾風』という舞台作品で
関ケ原合戦の島津勢の戦いぶりを描いたことがあるのですが、
この時も一番強く思ったことが、登場人物たちが生まれ育った
鹿児島という土地への興味でした。
この土地で育った人たちが持つ特有の人生哲学を感じ、
2013年の再演にあたっては、その匂いを求めて鹿児島県内・県外を歩き回りました。
大河ドラマ『西郷どん』でも、その匂いが画面から溢れ出ているのが、
とても嬉しく、とてもわくわくします。
おもしろいドラマには、印象的な出来事も、個性的なキャラクターも不可欠ですが、
特に歴史モノのドラマで一番地味で一番重要だと思うのは、
人物たちが育ったバックボーンを感じられるかどうかだと思います。
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西郷さんたち鹿児島人の精神的土壌として、最も大きな影響を与えた存在が、
700年にわたり殿様として鹿児島に君臨し続けた「島津氏」の存在ではないでしょうか。
200年以上の平和を保った徳川政権の時代にあっても、
戦国時代の気風を持ち続けた幕末の薩摩の物語を見ていると、
彼らの背景に関ケ原合戦時の島津勢の姿が重なって見えてきます。

『島津の疾風』再演で製作したシナリオ&ガイドブックでは、
上演台本のほか、鹿児島県内外の島津氏ゆかりのスポット、
鹿児島の魅力が溢れるスポットを多数紹介したガイドも付いていて、
島津家の歴史を肌で感じるまちめぐりにオススメの書です。
大手の旅雑誌には絶対に載っていないマニアックな歴史スポットが目白押しです。

とうふのかど
▲『島津の疾風シナリオ&ガイドブック(桜島ver.)』 2,570円/A5サイズ/カラー138頁


劇団ホームページのグッズショップでも販売していますが、
大河ドラマ劇中にもしばしば登場する島津家別邸「仙巌園」の、
尚古集成館ミュージアムショップでも販売していますので、ぜひご覧ください!
魅力いっぱいの鹿児島をもっともっと好きになってもらえると思います!!
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鉄道トークイベントに出演します [日々雑録]

どこからどう見ても壇上にあがるキャラクターではないのですが、
今月末、南青山で開催される鉄道トークイベントにゲスト出演することになりました。
テレビでもおなじみママ鉄のパイオニア豊岡真澄さん、
以前からシアターキューブリックを応援してくださっている鉄道フォトライターの栗原景さん、
そしてローカル鉄道演劇には欠かせないミュージシャン・オオゼキタクさん、
このお三方が主催する「恋する!たび鉄部」のトークイベントです。
壇上が苦手、明るい照明が苦手、人に見られるのが苦手、人に話すのが苦手、
という、到底舞台上には上がってはならない性質の緑川ですが、
2018年の全精力を投入して臨みたいと思っております(笑)
ご一緒する出演者の皆さんの鉄道歴に比べれば、
バラスト一つくらいの知識と経験しかありませんが、
皆さんと一緒に楽しいひとときを過ごしたいと思います!

皆さんのお越しをお待ちしております!


『新春!たび鉄部2018新年初旅SP』
1月28日(日)16:30 open / 17:00 start
月見ル君想フ(東京都港区南青山4-9-1 B1)

出演:
豊岡真澄(ママ鉄)
栗原景(鉄道フォトライター)
オオゼキタク(シンガーソングライター)

ゲスト:
遠藤真人(鉄道写真家)/河野虎太郎(放送作家)/
緑川憲仁(シアターキューブリック代表)

1部:たび鉄初旅!実践編&タク歌
2部:話題の鉄道ゲーム徹底攻略
3部:ゲストを招いて新年会トーク
※終演後に懇親会有り(別途¥1500飲み放題)

料金:前売¥2500 (+2D¥1200) / 当日¥2800 (+2D¥1200)

【チケット取り扱い】
チケット予約サイトTIGETにて予約受付中
https://tiget.net/events/21519

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Return to the Roots [日々雑録]

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旅と演劇のコラボレーション公演、ローカル鉄道演劇。
今ではシアターキューブリックの活動の柱のひとつです。
初めてこの公演を行なってから今年でちょうど10周年、
節目となる今年、僕らはそのルーツの地・千葉県銚子に還ります。

劇団を結成してから7~8年が経った2008年ごろは、
若さの勢いだけでやっていた20代が終わり、
自分たちが演劇活動を続ける意味について考えるようになっていました。
この時代に演劇作品を発信する意義はいったい何だ??
僕らは、自分たちが暮らしやすい「演劇村」のような場所に閉じこもってはいないか??
そもそも、どうして僕らは演劇作品を創ろうとしているんだ??
劇団を創った頃は、考えもしなかったようなことを考えるようになっていました。
そうしたジレンマが行き着いた先、それがローカル鉄道演劇でした。


走行する列車で上演するこの公演は、
劇場での公演と違い、稽古場で積み上げた表現がそのまま再現できません。
「うっかり一般のお客さんが乗ってくる」
「併結している一般車両でのお客の乗り降りで時間が伸びる」
「車両の種類によって加速が違う」
「対向列車が遅れて、行き違いの駅で数分停まる」
こういったアクシデントが日常的に起きます。
劇場で上演する演劇も、ナマであることは間違いありませんが、
その瞬間起こり得る環境すべてに身を委ねなければならない
ローカル鉄道演劇は、究極のナマのように感じます。
この公演が孕んでいる特殊なハードルの高さによって、
僕らもあらためて演劇の面白さや難しさを学んだ気がします。

そして、「演劇」と「地域」のコラボレーションの意義深さ。
キャスト・スタッフ・お客さんが会場に大集合しなければならない「演劇」。
考えようによっては、大変不便なエンターテインメント。
ただ、別の考えようによっては、大変奇跡なエンターテインメント。
その「奇跡」をもっと輝かせたい!そう考えた時、
「地域」の魅力とのコラボレーションは、相当な必然性がありました。
2008年、2009年、銚子で学んだことを活かして、
今度は鉄道を用いないスタイルで岐阜県関ケ原にて、
そして地元の墨田区で、学習と実験を繰り返しました。
そして、ローカル鉄道とのコラボレーションも、岐阜県の樽見鉄道、
香川県のことでん、茨城県のひたちなか海浜鉄道と、
次々と新たな挑戦を続けてきました。
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それから10年。僕らは、ふるさとの銚子に戻ります。
そのあいだにすべてが10年の時を刻みました。
同じ人物、同じ場所であっても、10年の時間の蓄積は、
いろいろな変化をもたらしていることと思います。
その変化が作品にどういう影響を与えるのか、今の僕には分かりません。
それに出会うことが、今回の旅の目的なのかも知れません。

このところ、自分のルーツに向き合う出来事が続いています。
自身の核を見つめ、思考を深め、初心とともに新たな挑戦へ向かう。
仲間やお客さんと一緒に、旅を楽しみながら、
ふるさとから多くのことを学びたいと思います。

ジャーナリスト・杉山淳一さんがITmediaビジネスONLINEの記事に取り上げてくださいました!
ぜひ読んでみてください。
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1801/12/news036.html

公演情報
『銚電スリーナイン~Return to the Roots~』
作・演出 緑川憲仁
会場:銚子電鉄列車内&終点・外川(とかわ)のまち
2018年7月中旬~7月下旬
キャスト ほしあいめみ 高橋茉琴 片山耀将 谷口礼子 千田剛士 榎本悟 ほか
☆続報をおたのしみに!☆

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劇団熱血天使さん『ヒミコ』観劇。 [日々雑録]

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いつでも初めて観る劇団のお芝居はドキドキです。
新百合ヶ丘アルテリオ小劇場、東京の東側の人間にとってはちょっと遠い劇場です。
ということで、せっかくですので、小田急ロマンスカーで。


劇団熱血天使さん公演『ヒミコ』。
先日ご縁があってお会いした菅沼萌恵さんが
中心メンバーとして活躍されている、結成10周年を迎える若手劇団です。
日本の歴史を題材にした作品で、小田原・萩・秋田など、
近年では地方公演も積極的に行なっているようです。
このあたり、シアターキューブリックと近い活動スタイルですね。
ウチの場合は時代モノも、ローカル鉄道演劇も、創作のファンタジーも、
いろんな作品をコロコロと広く浅くやっていますが、
熱血天使さんは、日本の歴史の魅力を伝えるというテーマで、
題材を深く掘り下げて、歴史ファンをも唸らせる中味の濃い歴史作品を創られています。


今回の作品は「邪馬台国」。

作家の視点としては、かなりハードル高いとこ行ったなあという感じです。
だって、史料がほとんどないですもの(笑)
が、たとえ史料が乏しくても、「人の営みがあった」という現代との共通点があります。
まだ公演期間中ですので、詳しいことは書けませんが、
「歴史への畏敬」と「生命への礼賛」を感じる
演出要素盛りだくさんの歴史スペクタクルでした。

またダンス振付ではシアターキューブリックの『誰ガタメノ剣』に出演してくれた
森澤碧音ちゃんが参加していて、ロビーで久々に元気な顔を見られました!
びっくりしたのと、嬉しかったのとで、写真撮り忘れました~。

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▲キャストの菅沼萌恵さんと、終演後ロビーにて。

劇団の中枢メンバーでもある菅沼さんは、今回の作品では原案を担当されていて、
先日お会いした時も、人や時代の深い部分を静かに観察する方だなあと、
まるで昔からの知り合いみたいな気持ちで、とても楽しくお話をさせてもらいました。
そして、僕自身が自分の活動について振り返ることができる貴重な時間を頂きました。
人としての美しいこころも、覆い隠したくなるようなネガティブな部分も、
あらゆる葛藤を万華鏡のように内包した、
泥の中に咲く蓮の花を思わせる素敵な女優さんです。


今回の公演は今週末1/14まで上演しています。ぜひ!
劇団熱血天使さんホームページはこちら
http://kokorozashi-jp.wixsite.com/nekketsutenshi


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2018 年もよろしくお願いします [日々雑録]

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新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
3年にわたる厄年をどうやら無事に終えました。
人は一人で生きられるはずもなく、何事もなく厄年を終えることができたのも、
僕の人生に関わってくださるすべての皆様のおかげでしかありません。
もっと若い頃に、この道理に気づけていれば、もっと違う生き方ができたでしょうに、
けれども、遅まきながらここへ辿りつけた事は、何事にも替えがたい安堵であり喜びです。

「演劇のチカラで街を遊園地に!」というシアターキューブリックの活動理念、
「どこまでも、人が集う幸せを求めて。」というネビュラエクストラサポートの企業理念、
この2つの理念は、僕自身の人生のテーマといっても間違いではありません。
これらの理念が目指すものは、今後の日本にとって、
きっと大切になってくるだろうと感じている「新しい豊かさのかたち」です。
僕も含めて、まさに未知の世界への挑戦です。
進もうとしている道が正しいのか間違っているかなんて、ぜんぜん分かりません。
物があふれた好景気真っただ中の昭和末期に生まれ、
その価値観が崩れ去り、新しい価値観を求めて彷徨う平成時代を生きた僕が、
自身の経験と感覚を総動員して挑む、壮大な作品づくりです。

人と人が響き合うことなくして、先に進むことはできない、この作品づくり。
伝えること、つまり「こころ」と「言葉」を大切に、
小さな石を積み上げるように今年も進んでいきたいと思います。

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今年もありがとうございました。 [日々雑録]

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緑川憲仁のブログ「新とうふのかど」を読んでくださっている皆さん、
2017年もありがとうございました。
おかげさまで、今年も大変充実した一年を終えることができそうです。
2016年から今年にかけては、自身の人生を大きく変えることが多くありました。
自分の性格が物事に対して非常に「飽きっぽくない」ため、
一度始めたことや、一度好きになったことを、とことんまで追究する気質が、
この歳になって、芋づる式にオリジナリティを発揮し出したように感じます。

シアターキューブリックでは、2008年以降、日本の全国各地にて、
演劇と地域のコラボレーションをテーマにした公演や企画を打ってきました。
2008年、2009年は千葉県銚子市、2010年は岡山、
2011年は高知、そして岐阜県関ケ原町、2012年も関ケ原、
2013年は鹿児島、2014年は箱根、岐阜県本巣市、
2015年は香川県、2015年から2016年にかけて茨城県ひたちなか市。
すっかり、日本じゅうに僕らの故郷ができました。
同時に、シアターキューブリックは東京都墨田区を本拠にして、
演劇と地域のコラボレーションの活動を日常的に行なっていて、
これまで各地で学んだことを地元の活動に活かそうということをテーマに、
2017年は地元の銭湯を舞台にした7年ぶりの銭湯演劇と、
商店街を劇場に見立て、すみだのまち劇場化プロジェクトというものを行ないました。
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▲6月、墨田区主催「地域学セミナー」の講師を担当させていただきました。

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▲10月上演『寺島浴場の怪人』。

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▲11月、すみだのまち劇場化プロジェクト『キラキラ橘商店街でショー』。

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▲結成6周年を迎えた、帰ってきたキューピッドガールズ。

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▲12月、岐阜高専演劇部さんでのローカル鉄道演劇ワークショップ。

演劇業界ではちょっと変わった存在になっていますが、
演劇の新たな可能性を探りつつ、演劇の魅力を多くの人に広めたい、
という思いは日々着実に実を結び、
僕らの活動を面白がってくださったり、励みにしてくださったりする方も増えました。
僕らが演劇を始めた頃は、何年後には観客動員数何万人だとか、
何年後にはどの劇場で公演を打つだとか、
そういったことを活動のステイタスに感じていましたが、
僕らの周りでいつも笑ってくださる方々のおかげで、
そういったことよりも、もっともっと大切な活動の意義を見出すことができました。
もちろん「意義」だけでは活動を続けていくことはできません。
長期にわたり継続させていくには、社会的に自分たちのスタイルを確立させること。
劇団の代表としては、ここにしっかり取り組んでいかねばと思っています。
シアターキューブリックの活動に関わってくださったすべての皆様に感謝いたします。

2016年夏に専務に就いた舞台業界振興企業ネビュラエクストラサポート(Next)では、
今年7月から代表取締役の職を預かり、慣れない会社経営と格闘しています。
昨年は人材難をはじめ、噴出する問題をモグラたたきのように、とにかく潰していく日々でしたが、
今年は劇団☆新感線『髑髏城の七人』の会場での劇場業務などの新しい挑戦と、
社内改革を目指した制度整備などを並行的に推進し、
新体制の会社が目指す方向を仲間とより深いところで共有できる素地ができつつあります。
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▲豊洲の新劇場ステージアラウンド東京のロビーにて。

緑川の「作家脳」だけでは安定的な会社経営を行うことはできませんが、
僕がこのタイミングで会社の社長になった理由は、
この作家脳が必要とされているからだ、という感触もはっきりと感じています。
「社員の生活を守り、業界や社会に貢献する」という重い重い役割があればこそ、
溢れる遊びごころで仕事に取り組むことが大事だと確信しています。
来年は緑川の作家脳をもっと会社経営に活かし、必ず次のステージに上がります。


個人的には今年が後厄の年で、厄払いも何もしなかったわりには、
何事もなく厄を終えようとしています。
これも僕の周りで日々僕を支えてくれている人たちのおかげです。

物質的空間的に支えてくれている家族や仕事仲間や友人の存在はもとより、
精神的な成長や発見を促してくれる存在の大きさを思い知る一年でした。
「自分自身のルーツ」というものに関しては、
誰もが自分の細胞に染みついているがゆえに、通常、本人はとても鈍感になりがちで、
鈍感になることで、風化するように要素が薄まっていき、
同時に、身についた他の要素によって、結果、人は時とともに変質していくのだと思います。

僕の、物書きとしての細胞をかたちづくる、アーティスト岡村孝子さんの存在。
14歳で出会ったこの方の音楽は、その後の長い年月で僕の深いところまで染みつき、
緑川が発信する演劇作品に影響を与え続けながら、徐々に風化していました。
ですが、今年夏、絶妙なタイミングで、自分のルーツを体感する機会をいただき、
肉体は歳を重ねて老いることがあっても、魂は歳を取らないことに気づかされました。
42歳の緑川のなかに、14歳の少年が溌剌と生きていることを実感した瞬間でした。
今年のそれからは、この方の言葉から、ふたたび多くのことを学び続けています。
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▲10月、香川県三木町でのコンサート後、楽屋にて。
※岡村孝子さんのご了解をいただいて掲載しています。

これまでも「緑川は年齢不詳」と散々言われ続けてきましたが、
おそらく2018年以降もその路線は維持し、
それどころか、ますます不詳になっていくことと思います(笑)。
年々老いてゆく肉体のことも忘れることなく、
14歳の少年は元気溌剌と生きてまいります。

今年も一年ありがとうございました。
皆様、どうぞ、良いお年をお迎えください。

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「気」が光る場所へ ~岡村孝子さんクリスマス・ピクニック大阪公演~ [日々雑録]

神社へお詣りに行くと、境内の空気が光っているのを感じます。
それは神社に限ったことではなくて、喫茶店、旅館、ふつうのお店でも、
時々、空気がピカピカしているのを感じて、
そういう場所はだいたい緑川行きつけの場所になります。

共通して感じることは、「そこに集まる人の想いが通い合っている場所」。

先日、岡村孝子さんの東京公演のコンサートに出かけた時、
帰り道、旧知の仲間が「なんだか神社にお詣りした後の気分!」と言いました。
たしかに、舞台上にいる岡村孝子さんが祭神で、
僕たちはご利益をいただく参拝者みたいだなあという感じに
その時はその言葉を聞いていたのですが、
先週土曜日、ツアー千穐楽の大阪公演に参加してみると、
その言葉を聞いた時とは少し違うことを思いました。
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大阪では舞台上の岡村孝子さんと観客がそれぞれ左右の手であるように感じました。
僕は神道のことはよく分かりませんが、
拍手(かしわで)を行なう時、左右の手があって初めて音が出るように、
どちらが欠けても成立しない空間なんだと。
大阪公演サンケイホールブリーゼ3列目の席で堪能させてもらったことは、
彼女の音楽の世界観だけではなくて、
その音楽が生まれてくる本質部分の妙。
1000名を超える大勢の観客の小さな反応にも常にアンテナを立てて、
その人たちに伝えたい気持ちを、瞬間瞬間で厳選した言葉に乗せて、
丁寧に、美しく届け続けているのが、はっきりと感じられました。

「美しい言葉」。

これは、僕自身が生涯で大事にしていることのひとつです。
僕が岡村孝子さんの音楽を聴くきっかけとなった曲『はぐれそうな天使』。
14歳の僕は、この曲の言葉の美しさに打ちのめされました。
来生えつこさん作詞、来生たかおさん作曲の、この楽曲。
ほとんど全曲をご自身が作詞作曲している岡村孝子さんですが、
皮肉にも僕がハマったきっかけになった曲は、ご自身作詞ではない曲でした。

「恋したら 騒がしい風が吹き、
はぐれそうな天使が私の周りで慌ててる」

サビ冒頭の一節です。
繊細でひたむきなことこの上ない「詩」と、
この詩にこれ以上相応しい旋律は考えられない「音」。
そして、その二つを響かせている岡村孝子さんという「溶媒」。
世の中のことも、人生のことも、まだなんにも分からず、
どんなふうに生きていけばいいのか無自覚的不安のなかにあった
14歳の僕を、ふわりと掬い上げてくれた曲でした。


それから28年経っても、僕の大切なものはやっぱり「言葉」で、
岡村孝子さんが発信し続ける言葉もまた美しいものでした。
5年前、岡村孝子さんの「ミストラル」という曲を
シアターキューブリックの舞台作品でのテーマ曲としてお借りして以降、
岡村孝子さんのファンの方々とのご縁をいただくようになったのですが、
そのファンの方々が話す言葉もやっぱりきれいなんですよね。
そういう人々が集う劇場が、神社みたいに空気がピカピカするのも当然かも知れません。
なにしろ、みんなの「気」が光っていますからね。
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クリスマスを控えた12月23日の夜、この日のコンサートの最後の曲は
『世界中メリークリスマス』という曲でした。
僕にとっては自動涙腺崩壊装置のような曲です。
個人的感想ではありますが、際立った独自のメッセージというよりも、
むしろ、とても普遍的に、みんなのしあわせと、世界の平和を祈るクリスマスの歌。
12月15日のブログでも書きましたが、この曲の世界に絡まると、
子供の頃の感情を思い出し、その時代にタイムトラベルさせられます。
気を張っているちっぽけな自分を広い心で優しく包み込んでくれるようで、
張りつめた気持ちがポキッと、へし折られるんですかね。。
そして、ただ優しい気持ちに包まれて癒されるだけではなく、
静かに佇む「孤独」の影を必ず突き付けられます。

岡村孝子さんの真骨頂はきっとここだと思います。
幸せや、優しさや、ポジティビティのなかに、必ず「孤独」がいること。
その孤独は、人が生きていく時、誰もが絶対に逃れることができないもの。
岡村孝子自動涙腺崩壊装置の本質はここにある気がしています。
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僕もそうですが、誰もがこの人のように、
人を幸せな気持ちにさせられるものではありません。
けれども、僕でも「人の幸せを祈ることはできる」。
そんなことを教えられた気がします。

そして、そういう自分に近づいていけるよう、
見たいような、見たくないような、自分のなかにある孤独の淵を覗き込むため、
この方からはもっともっと多くのことを感じ取っていきたいと、あらためて思いました。

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神宮前駅跡から思うこと [日々雑録]

外国の人から見ると、日本の街の変化はものすごい速さであるらしいです。
たしかにヨーロッパの街は年季の入った風景が多いですからね。
ヨーロッパで150年前と変わらない場所なんてきっといっぱいあるでしょうけど、
東京で150年前と変わらない場所なんて、江戸城の内堀と寺社の一部くらい?
そもそも150年前って言ったら、ふつうにちょん髷結ってた時代なんですよね。
それも驚きですね。

さて、東京最初の地下鉄、銀座線が誕生してから90年が経つそうです。
そして、かつて表参道駅そばにあった神宮前駅跡が期間限定でライトアップされています。
神宮前駅は銀座線表参道駅ホームの渋谷寄りの場所にあった駅で、
昭和13年に出来た時は「青山六丁目」という名前でした。
その神宮前駅が、昭和47年に千代田線の表参道駅と統合するときに、
新設ホームが銀座寄りに新設されたので、この部分が旧ホームになったのだそうです。
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自分が生まれる前の東京の街の一部が、地下の片隅にそのまま残っているって、
とても幻想的で、とてもすごいことです。
ただでさえ、東京はどんどん新しくなっていってしまう街です。
まるで、口数の少ないお爺さん先生に、
「お前が住んでいる街はな、昔の人の夢と努力で作られた場所なんだよ…」
って教えられている感じがします。
ノスタルジーとか、そういう情緒的なことではなくて、
今、自分が暮らしている街は飽くまでも「借りもの」で、
必ずいつか次代の人たちに譲っていく時が来るということを、
昔の建築や、変わらずにいる場所は教えてくれている気がします。

「ゼロから創っては全部壊す」。
日本がその循環から卒業できたら、もっと素敵な国になっていくだろうなあと思うし、
きっと今、既にそういう方向に向かっていっているように思います。


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