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岡村孝子さんのクリスマス・ピクニック [日々雑録]

もう、この人のことを書くときには、これを言わずにいられない、
「僕の物書きとしての細胞は、この人の言葉と旋律でかたちづくられている」
岡村孝子さんのコンサート、クリスマス・ピクニックに行ってきました。

今回初めて知った蒲田駅前の劇場「アプリコ」。
蒲田にこんなに素敵な劇場があったんですね。
そして大劇場の客席の、なんと4列目という破壊的な席(笑)
繊細な息づかいまで、しっかりと堪能できる距離。
今回、席を取ってくださった方にはあらためて感謝感謝です。
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抜群な臨場感で聴く、珠玉の曲たちの素晴らしさはもちろんですが、
僕は岡村孝子さんのおしゃべりの時間が大好き。
ご本人はMCがあまり得意ではないと謙遜していらっしゃるんですけれど、
訥々としたおよそ飾り気のないおしゃべりを聴いていると、
舞台と客席の隔たりを忘れるほどに、ほんわかとした空気に包まれます。

僕自身が「言葉」を仕事にしているから感じることかも知れませんが、
岡村孝子さんがおしゃべりの中で言葉に込める誠実さは怖ろしいほどです。
たとえ発する言葉は同じでも、そこに込める気持ちの深さは浅くも深くもなりますし、
自分の気持ちを言葉で伝えようとした時、どういう言葉を選ぶか、という
岡村さんの言葉の選択に対する集中力と、妥協の無さ、怖ろしいです。
その誠実さが、こんな大空間を柔らかな空気に変えるのですから、
幸せ過ぎて、ヘンな話、深いため息が出てきます…。

「相手の前に今、自分がいる」、という、ふだん見落としがちな奇跡。
この奇跡を感じながら、相手の息づかいを拾い続けてゆく誠実さ。

僕も仕事柄、大勢の人に向けて言葉を発信する機会が多いのですが、
その場をどうにかうまくまとめよう、という邪念に翻弄される自分の軽さを思い知ります。
「自分が今、相手からどう見えているか?」なんて、
伝えたい気持ちが強ければ、本来考える必要の無いことです。
そこを気にしてしまうということは、伝えたい気持ちがまだ足りないということですね。
当然のことですが、今この瞬間は今しかありません。
岡村孝子さんの歌もおしゃべりも、その瞬間を極限まで大切にする、深い心を感じます。
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コンサートのラストナンバーでは、もうダメかと思いました(笑)
隣の席に知人がいなければ崩れていたかも知れません。
音楽を聴いていて、切なくて涙が出るということはよくありますが、
「旋律が幸せ過ぎて泣く」ということがあるのですね。恐るべしです。

そしてこの余韻は大変しぶとく、明くる日の蒲団の中でもまだ続いていて、
僕は一人前の中年ですが、蒲団の中で泣きましたとも。

そしたら、その昔、蒲団の中で泣いた夜のことを思い出しました。
小学校高学年の、これもちょうどクリスマスの夜のことです。
もう、自分の親がサンタさんなんだってことに気づいていた年頃です。
クリスマスイブの晩に、理由は忘れてしまいましたが、親と喧嘩になってしまい、
今年はイヤなクリスマスになっちゃったなあって思っていました。
蒲団に入って小一時間すると、母親がそーっと枕元にやってきて、
ガサッと何やら包みを置くような音がして、またそーっと部屋を出ていきました。
蒲団をかぶっていた僕は、その音が何なのかを察して、
申し訳なかったからなのか、嬉しかったからなのか、
自分の気持ちがよく分からないまま、蒲団の中でとりあえず泣きました。
ちっぽけな自分と、愛されている自分、両方を同時に感じたのかも知れません。
このコンサートの余韻は、昔のそんな出来事とリンクする、とても心あたたまるものでした。

この日来ていた多くのお客さんも、こんなふうに自分の思い出と合わせながら、
大切な人や、大切な時間に思いを馳せていたのかも知れません。
会場中、とてもとても幸せそうな顔がいっぱいでした。


ダメですね、お酒が入っているわけでもないのに語ってしまいました。
次は大阪千穐楽。3列目。自分が心配です(笑)
そしてさらなる素晴らしい歌声が楽しみです。


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ほしあいめみちゃん [日々雑録]

岐阜からの帰り、僕らキューブリックメンバーは名古屋駅から新幹線に乗るので、
ちょっとの時間でもいいから会いたい、この人を呼び出しました。
おもに東海圏で活躍中の女優、ほしあいめみちゃん。
最近ではテレビのグルメリポーターもしています。
たしかに、とてもおいしそうに食べる人です(笑)
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キューブリックには一昨年『ことでんスリーナイン』のヒロインとして参加してくれました。
初めて会った日から、めみちゃんとは必ず一緒に何かやるだろうなあって思ってました。
知り合ってからの年数もそれほど長くないし、
作品も一回しか一緒にやってないんだけれど、
ものすごく昔からの知り合いみたいな感じの人。
会ったらいっぱい話そうと思っていたんだけど、
いざ会ってみると、一緒にいるだけでじゅうぶんに思ってしまう。


東京と名古屋の距離の遠さが、いつももどかしいんだけど、
いつでもそんなハードルは飛び越せるくらい、お互いを近くに感じてる。
これから先、いくつ一緒に作品を作れるかな。
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岐阜の若者たちと演劇やってきました! [日々雑録]

岐阜といえば、シアターキューブリックにとっては、
関ケ原東西武将隊、『島津の疾風』、『樽見鉄道スリーナイン』と、
まさに第二の故郷のような場所なのですが、
今回は岐阜高専演劇部の皆さんと演劇ワークショップをやってきました。
岐阜高専演劇部の皆さんとの出会いは3年前の鉄道演劇『樽見鉄道スリーナイン』。
この時に公演のサポートをしてくださったことをきっかけに
その後、はるばる東京までシアターキューブリックの公演を観に来てくれたり、
劇団メンバーが学校の文化祭に遊びに行ったりと、お付き合いが続いてきました。
そして今回は、僕らが出会うきっかけとなった鉄道演劇の稽古を体験してもらおう!
という趣旨のワークショップを企画しました。

岐阜市の郊外、本巣市にある岐阜工業高等専門学校までは樽見鉄道に乗って。
ちょうど大垣駅に停まっていたのは、公演で使わせていただいた車両でした。
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車内の吊り革がこんなかわいらしいデザインになっていました!
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ふだんは1ヵ月近い時間をかけて煮詰めてゆく公演の稽古。
わずか半日のワークショップをどういう時間にするべきか。
「ローカル鉄道演劇」という特異なスタイルのワークショップではありましたが、
行き着いたところは、やはり「演劇の楽しさを分かち合う」ということでした。
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経験や技術の話をすれば、当然ながら僕らのほうが豊富に決まっています。
俳優は、お客さんに丁寧に誠実にメッセージを届ける仕事である以上、
経験や技術は大変貴重なものです。
ただ、演劇の現場でもっとも大切なことは、「感情」です。
それは自分自身が自覚してコントロールできる感情もあれば、
無自覚的に氾濫する感情もあります。
特に後者の感情は、多感な10代20代の彼らの宝物。
それらの感情が、仲間との協働の方向へと向けられた時、
思いもよらない奇跡が起こります。
今回のワークショップの稽古場もそんな空間になりました。
彼らの潜在能力は計り知れないものがあります。
彼らと一緒に過ごした時間はほんの僅かであるはずなのに、
僕は心から彼らの変化や成長を嬉しく、そして頼もしく思いました。

きっと、彼らの中に、在りし日の自分を見ていたのだと思います。
ずーっと昔、自分もこうだった、と。
そして、そんな自分は今どこに行ったのか、と。
かつての僕は、けっして失われてしまったのではなくて、
自覚していない、自分自身のどこかに隠れているんです、きっと。
それを探したくて、僕はこういう時間を企画し、彼らに会いにいったような気がします。
プロの演劇人が高専生に演劇を教えに行くなんて、これっぽっちも思っていなくて、
むしろ彼らから教えられる、気づかされることだらけだった一日でした。
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経験を重ねたことが却って仇になり、「慣れ」から「惰性」へと落ちていったとき、
老いていようといなかろうと、人間はきっとダメになってゆくんだなあと、
キラキラ輝く彼らの目を見ながら、そんなことを思いました。

人生日々勉強。
僕も彼らに負けないよう、いつまでも挑戦を続けていきたいと思います。
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ユーミン@帝国劇場 [日々雑録]

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松任谷由実さんの舞台を観てまいりました。皇居前の帝国劇場です!
そしてユーミンなのにコンサートではありません。演劇です。
すごいですよね。


松任谷由実さんの楽曲とコラボしたお芝居。
語り手的ポジションの松任谷由実さんが、
ストーリーの進行に絡めてご自身の歌を歌うんです。
まだ公演が残っていますので、具体的なことは書けませんが、
シャングリラの演劇版とでも言いましょうか。
この方の楽曲の世界観は、本当にいろいろなカタチで表現できるんですね~。
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ベテランの寺脇康文さん、六平直政さん、斉藤洋介さんの深みのあるお芝居は無論、
若手の中別府葵さんなどが紡ぐ軽妙でリズミカルなお芝居、
とりわけヒロイン宮澤佐江さんの瑞々しさが印象に残る素晴らしい舞台でした!
瞬きをするのも勿体ないくらい演出が本当にすごいのですが、
逆に目を閉じて世界観を堪能してみたくなるような気持ちにもなりました。
舞台を観る者にとってこれほど贅沢な悩みはないですね。


そして、帝国劇場といえばロビーがお楽しみ!
年季の入った劇場空間って、包まれているみたいで安心するし、わくわくします。
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案内の字体も好き。


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敵地の桑の実 [日々雑録]

長宗我部元親を描いた司馬遼太郎さんの小説『夏草の賦』のなかにある、
元親が平民に身をやつして敵の領地に乗り込んで、
地形等、合戦に必要な情報を自分の目で確かめに行き、
そのついでに敵地の桑の実を盗み、農民に追われ、
城に戻ってくるというエピソードが大好きで。

作品づくりやあるいは何かの企画の折、
自分は、その題材の地域にやや長めに滞在することが多く、
元親のそのお話と少し似ているなあと。
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作品づくりは、自分との戦いのようなもので、
題材となる地域に、いかに「同化」できるか、
それによって、その作品や企画の深みが変わってくる。


地元の人たちの素顔が覗ける場所、会話が漏れてくる場所。

気がつくと、僕はいつもそういう場所に留まっている。
作品の結果が出るまで、あるいは結果が出た後でも、
そういう、ぐうたらした行動が評価される日は来ないかも知れないけれど、
こういう時間がとても大切だということをあらためて感じた。

いつでもどこか無意識に「桑の実」を探しているのかも知れない。

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これは柿の実。
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導かれるままにゆく [日々雑録]

仕事ならば目標だって立てなきゃならないし、
こうありたい明日の自分の姿を思い浮かべたりするけれど、
それが達成できたことなんて、ほんの僅かだ。
なんか苦しいなあって思う時は、大概、掲げた理想や目標に縛られてるし、
心が軽く感じる時は、見えない何かに導かれて、その日の風に身をゆだねてる。

世の中にはパワースポットと言われる場所がいくつもあるけど、
自分だけのタイミングで、自分だけのパワースポット、というのもきっとあると思う。
近頃、そのタイミングと場所を嗅ぎわけて、そこへ行けるようになってきた。

なぜそのタイミングで、なぜその場所なのか、その時の僕には説明できない。

いつも後になって、「ああ、あのときのあの出来事か…」というように、
因果はずいぶんと時が過ぎてから自分に答えを教えてくれる。

今日も僕は、よく分からない何かに導かれ、心軽やかに歩いている。

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光を照らす人、岡村孝子さん。 [日々雑録]

よく巷のお仕事の電話やメールにて、
「いつも大変お世話になっております」というワードがしばしば登場します。
僕も岡村孝子さんには大変お世話になっている、といえば、間違いなくそうなのですが、
もはや、緑川憲仁という人間が、舞台の劇作家として、
素敵な仲間やお客さんに日々恵まれ、
素敵なお仕事に日々恵まれ、
こうして息を吸って生きていられるのは、まぎれもなく、
10代の頃から僕を今の場所へと導いてくれた岡村孝子さんのおかげで、
どんな言葉を尽くしてお礼を言えばよいのか、、、

おそらくそれに足る言葉はどこにも存在しない気がします。
それはきっと、僕が死ぬまでそうなのだと、ゆうべは眠れなくなりました。
今日も眠れないのかな……。


劇作家としての細胞のもと、岡村孝子さん。
この方の音楽と出会ってから28年、孝子さんはずっと光を照らし続けてくれました。

「いくつの悲しみは今日への道しるべ」。

夢をあきらめないで頑張り続けることが、今は唯一つのご恩返しだと考えています。

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※岡村孝子さんのご了解をいただいて掲載しています。

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光と笑顔あふれる庭で [日々雑録]

「物書きとしての細胞は、岡村孝子さんが紡ぐ言葉と旋律で出来ている」。
これまで、このブログでも何度か、この言葉を書いていますが、
それほどに、緑川自身のアイデンティティーを考えたとき、
親の存在にも劣らない岡村孝子さんの音楽。
何しろ、14歳という多感な時代から常に僕の人生に伴奏してくれている音楽。
そうなっても何ら不思議はありません。
シアターキューブリックでは、5年前の公演『葡萄酒いろのミストラル』で、
「ミストラル」という曲を公式テーマ曲として拝借したこともありましたし、
そもそも、僕が創る全作品のどこかしらに、
必ず岡村孝子さんのエッセンスが摺り込まれているはずです。摺り込まれています。
そんな岡村孝子さんのコンサートがちょうど香川で行なわれるので、行ってまいりました。
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緑色のことでんに乗って、「学園通り」というかわいい名前の駅で降り、
すぐ目の前にある立派な劇場、「三木町文化交流プラザ」へ。



岡村孝子さんの「T’s GARDEN」という企画の視点はちょっと面白くて、
ふつうなら有名アーティストの地方公演というのは
大阪・福岡などの大都市で行なわれることが多いのですが、
「あなたの街で岡村孝子がパーティーを開くので気軽に遊びに来てください」
といったスタンスで全国各地をめぐっているアットホームなコンサート。
とても岡村孝子さんらしい企画です。
今回、香川県の三木町ということで、
東京人の僕にとっては、まったく「あなたの街」ではないんですが(笑)、
ちゃっかり参加させていただきました。
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遠方の公演を鑑賞する、というのを僕は今回初めて経験したのですが、
その人にとっては会場までの道のり、その後の道のり全部が「旅」ですから、
自然と、コンサート前後の時間全部が、音楽とミックスされるんですね。
すると、その地域の風景と、自分が好きな音楽が合わさり、
その人にとって、その街が特別な場所になる……。

これはすごいことです。
音楽というのは、自分が過ごした「時代」を思い出す、とよく言いますが、
時代だけではなく、「場所」「まち」をも思い出させるアイテムなんですね。


会場に詰めかけたお客さんは、
岡村孝子さんのコンサート初体験の人がほとんどらしかったのですが、
思い思いに楽しまれていて、その皆さんの顔をついつい見て、
僕までほくほくしてしまいました(笑)。
お客さんを見てしまうのは、僕の癖、というか職業病のようです。

地方の町で開かれるコンサートの何とも言えぬあたたかさ、病みつきになりそうです。
素敵なひとときをありがとうございましたー!!

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あなたにめぐりあう旅へ [日々雑録]

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11日に終わったばかりの公演の余韻も冷めぬまま、
四国へ向かう寝台特急に揺られ、降り立った2年ぶりの高松。
10年前から数えきれないくらい訪れている四国ですので、
地図がなくても迷うことはありません。


香川県です、まずはとにかく「うどん」に会いに行きます。

香川県内のうどん屋さんは、早朝に始まってお昼過ぎには閉まってしまうお店がほとんど。
そのため、「朝に高松到着」ということは、かなり選択肢が多い状態なわけです。
高松の中心地にもいくつも名店がありますが、ここはこだわらずにはいられません。
というわけで行ってまいりました、「山越うどん」!
このお店はマイカーがないと、なかなか厳しい場所にあります。
電車だと最寄駅はことでんの綾川駅、そこからバスです。
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山越うどんのうどんは、麺のコシの強さと滑らかさがとにかくすごい!
そして、素敵なお庭で、空と緑を眺めながら食べられるというのが、またいいんです。
香川県はおいしいうどん屋さんばかりですので、
「どこのうどんが一番おいしい?」という質問には答えられませんが、
「どこのうどんが好き?」という質問には、食い気味で「山越うどん!」と返します。
みなさんもぜひ一度行ってみてください。
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そして、「広い風景のなかに一人いる」自分に会いにいきたくなりました。
ことでんで高松に戻り、高松港からふらりと乗ったフェリーは小豆島行き。
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瀬戸内海もすっかり秋で、海風もなかなかの冷たさでしたが、
「広い風景のなかに一人いる」自分は、あたたかい船室ではなく甲板にいるはず。
目を閉じ、耳を澄まし、海風を頬に感じながら、
自分自身のカラダとココロを、まっさらな気持ちで確かめるひととき。
体は冷えましたが、その分だけ、心が楽になるのが不思議。
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これまでは直島ばかり行っていたので、今日が初上陸の小豆島。
オリーブと「二十四の瞳」で有名な小豆島。
見どころがたくさんある島ですが、
オリーブ公園の高台から、穏やかな瀬戸内海をひたすらボーっと眺めます。
僕の目的は広い風景のなかで、ただ居ること。
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まったく何もせず、きっと何かを考えてはいたのでしょうが、
これといって何も考えず、「自分が居る」ということを、ただただ感じたのでした。
しかし、今日のこの時間が、この先どのように活きてくるのかは分かりません。
これまで僕は、この「一人」の時間で、家族や仲間やチームや自分の仕事を、
ふだんと違う距離で感じながら、次の手を、そして次の作品を考えてきました。
平たくいうと、「濃い酸素を吸う」ような大切な時間。



そして、シアターキューブリックで香川県といえば、『ことでんスリーナイン』です。

2015年、90年の歴史を持つことでんのレトロ車両を専用劇場に、
ローカル鉄道演劇第4弾として上演した作品です。
木のぬくもりに包まれた、生きものみたいな電車に揺られて、
物語の舞台となった滝宮へ。
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近代産業遺産にもなっている駅舎は、今も町のシンボル。
「古くて、お洒落で、重厚で、かわいい」、ってすごい。
僕もこんなおじいちゃんになりたいものです(笑)。


駅の近くにあるお菓子屋さん「ほくろ屋」は、
作品のまちあるき部分でコラボレートしたお店です。
滝宮名物の「ぷりんどらやき」が有名で、
今でもシアターキューブリックのお客さんのあいだで話題にのぼります。
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2年ぶりにお会いするほくろ屋さんのご主人。
まるでタイムトラベルしたように何も変わっていませんでした!
2年前に初めてお会いした方なのに、
ふるさとの幼馴染みに会うような気持ち。
嬉しくて目が潤みました。
今度はみんなで遊びに来ます!とガッチリ握手をしてさよならしました。
切なくて目が潤みました。


そしてまた、おなじみのことでんに揺られながら、高松へ。
まだまだ旅は続きます。

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台所で決壊 [日々雑録]

自宅の台所の机で仕事をしながら、ボタボタ涙を流して泣きました。

目下、脚本執筆中で基本的に気持ちに余裕が無い毎日を送っているのですが、
それでも前回のブログにも書きました通り、自身のルーツに再度向き合うべく、
岡村孝子さんの音楽を昔から直近のものまで全て「再インストール」している最中で。


ただ、僕の詰めの甘さといいますか、何といいますか、
昨年リリースされましたベストアルバムがあるのですが、
自分が既に持っているアルバムと収録曲が重複しているであろう、
ということでまったくのノーマークでした。
しかし、よく見てみると、
2枚組アルバムの2枚目のいちばん最後の最後の見慣れないタイトル、
「新曲」とあるではないですか。
遅まきながら、手に入れましたとも。

最後の曲は「Hello」という曲です。


紡がれている言葉、旋律が僕の琴線を攻撃してくるのは毎度のことですが、
2コーラス目のサビで、「突如」です、突如、辛島美登里さんの、
そして、さらにその後、平松愛理さんの声が襲い掛かってきた時、
脚本を進めるべくパソコンのキーボードを打っていた僕は、声も出さずに号泣しました。


岡村孝子さんといえば「あみん」で、
パートナーの加藤さんとは一心同体のような印象で、ハモリも絶妙な調和ですが、
今回突然現れた辛島美登里さんや平松愛理さんは、
それぞれの長いソロ活動で活躍し続けてきたビッグアーティスト。
そのお二人が岡村孝子さんの曲に出てくるという、普通では考えられない作品。
声も歌い方も、それぞれの個性が炸裂していて、であるのに、
加藤さんとの絶妙なハーモニーとはまったく趣が異なる調和、まさに「共演」。
また、歌のテーマが、「頑張り続けてきた人たちへのエール」のような内容で、
長い時間のなかで人と人がめぐりあう奇跡を讃えているのですが、
歌詞だけでなく、旋律だけでなく、
お二人の存在そのものがテーマと完全に結びついていました。
いつも自分の周りにいて支えてくれている人たち、
そしてこれから出会うかも知れない人たち、
その「有り難さ」を問答無用に突然突きつけられた、そんな感じです。

僕はまだ、人生の酸いも甘いも経験し尽くした、とはとても言い難い未熟者ですが、
自分なりに山あり谷ありの時間をここまで送ってきて、
仲間との出会いや別れを繰り返し、そして今も素敵な仲間に囲まれ、
息を切らしながら、今も、次の山を越えようと悪戦苦闘の日々です。

そんな折に出会った、この曲、この言葉、そしてこの声でした。



曲のなかの一節です。

「あなたとめぐりあって 喜び分かちあって
このきらめき 胸にきざみ 明日へ歩いていく」



世の中にはたくさんの刺激的で有名な音楽があって、
それらと比べれば、岡村孝子さんの音楽はとても平穏な印象があります。
ですが、食べてみて、あるいは食べ続けることで
ようやく分かる味や食感というものが確実にあります。
まるで、するめいかのようです。

今もお餅が胸につかえているみたいに、胸が苦しいです。
それくらい、僕の心に深い爪痕を残す音楽。
僕の細胞はやはり、この人の言葉と旋律で出来ているようです。

この曲は、ベストアルバム「DO MY BEST II」の最後の曲として収録されています。

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