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久しぶりにリピートした映画のこと [日々雑録]

中学生当時、南野陽子さんのファンだった頃(今もですが)、
有楽町東映で主演映画『菩提樹』を朝から夕方まで3回連続で観ました。
あの頃、映画館は入れ替え制ではなくて、ずっと客席に居られたんですよね。
昔はそんな時代もありました。

大学時代、キャラメルボックスに就職する前の一ファンだった頃は、
1カ月間の公演の前半と後半で、二度は足を運び、
演劇作品が日々変わり続けてゆく様子を見届けたりしていましたが、
映画や演劇の同じ作品をリピートして観るということは、今はまずありません。



先日、とても久しぶりに一度観た映画を、もう一度観に行きました。

数多の作品に触れる機会に恵まれたエンタメ業界で長年仕事を続けていて、
作品との出会いのインパクトも薄らいでしまっている自分を淋しく感じていましたが、
自分の心にひっかかった作品にもう一度会いにいく、という行為は、
一個人の衝動に正直に向かい合う、祈りにも似たとても大事な時間でした。


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深川栄洋監督、宮澤美保さん主演の映画『光復』。

まだどこで上映があるか分かりませんので、
ネタバレに繋がるような表現は避けたいと思いますが、
現代の人間社会が抱える問題や、地方コミュニティの難しさを浮き彫りにしながら、
普遍的な「人間」の業を抉り、
そしてそういう弱い存在である人間という生きものを
あらためて愛おしく感じてしまう、
とても重たく、とても優しい物語でした。

4月に一度観て、その後、作品自体のことを思い出す機会はあまり無かったのですが、
おそらく自分が生きる日常の時間のなかで、
無意識に作品を追体験するような思考が繰り返されていたのでしょうか、
再上映があるという情報に触れ、
「あらためてこの作品を観たら、自分はどんな思考をするのだろう……」
そう思って、あっという間に予約を入れていました。

深川監督とは比べるべくもありませんが、
僕も、物語を書き、演出をする仕事をする立場にあるだけに、
自分と同じこんな衝動を感じてもらえる作品だけを残したい、
たとえ暗く重たい印象の作品であろうとも、
人や社会を優しく包むような作品を創りたい、と心から思います。
またそういう作品づくりに参加したいと思ってくれる
俳優やスタッフとの出会いを大切にしたい、とも。



主演女優の宮澤美保さんは、深川栄洋監督とはご夫婦で、
お二人のその関係の深さもまたこの作品づくりに大きな力を及ぼしているように感じました。

20年以上「劇団」というスタイルにこだわり、いくつも作品を創ってきた僕は、
この点にこそ、最も強い関心を覚えました。

座組を構成する人々の関係が作品に与える影響。

良い要素もあれば、落とし穴になりかねないネガ要素もあるはずですが、
この作品における深川監督と宮澤さんは、固い信頼関係のもと、
人間がパーソナルな瞬間にしか見せないぶざまな様子や感情を、
緻密に、そして大胆に描いていました。
作品とは思えない、人の家を覗いているようなリアル。

信頼に基づいた緊張感が生み出す
創作現場の空気がしっかりとベースになって、
人間のそうしたリアルがフィルムに焼き付いていました。

僕が創るようなファンタジーテイストの舞台作品は、
リアルとは縁遠い「夢物語」と誤解されがちなのですが、
観る人々が楽しめる作品にするためには、
ファンタジーであればこそ、むしろリアルは絶対に必須で、
僕はいつでもどこでもどこまでもリアルを追求し続けたい。

それが観客に対する誠意のように思います。


物語を創る立場の人間として、
とてもたくさんの気づきをもらえただけでなく、
一人間として、豊かな心の旅をさせてもらえた
『光復』という映画作品に、心から感謝。

『光復』の公式サイト→ https://kofuku-movie.com/


また衝動的にリピートしたくなる映画や演劇に出会いたいな。
恋する気持ちにちょっと似てるんですよね、たぶん。


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