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ほんとうのような、嘘のような、劇団結成25周年の日 [劇作家の時間]

ほんとうのような、嘘のような、ほんとうの話です。


本日2025年2月27日、シアターキューブリックは結成から満25年が経ちました。


お誕生日も結成記念日も、毎年回数を重ねるほど、
(言葉は悪いですが)どうでもいい数字に思えてきます。
10年目、15年目くらいまでは、その数字が誇らしいものに思えていた気がしますが、
20周年を迎えた頃には、節目に感じる特別な思いよりも、
劇団の公演やイベント、日頃のミーティングでふと目にする、
ファンの皆さんや劇団メンバー、俳優仲間、スタッフさんの表情を、
こっそりと嬉しく思うことのほうが、自分のなかで大きなものになってきました。


それなのに、いま書いているこの文章もそうですが、
今年は何かと25周年を総括する場面がありまして、
個人的にはやや困るテーマであります。
でも自分たちで「劇団結成25周年〇〇!」とかいろいろやるのでね、
仕方ありませんね(笑)



いろいろなことが便利になった現代でも、
演劇は相変わらず不便なことが多くて、
お客さんがわざわざ劇場まで行かなきゃならなかったり、
映像のように再生産できなかったり、
たった一人キャストが欠けても作品が作れなかったり、
そんな面倒で不便なことを、よくまあ続けているなあと思います。
ですが、作り手とお客さん双方が面倒や不便を乗り越えて出会って、
楽しさを分かち合う体験があるからこそ、
こうしてずっと続けていられるのだろうと思います。


つまり、さっきは「作り手とお客さん」という表現をしましたが、
シアターキューブリックはお客さんも含めて全員が「作り手」なんですよね。
その思いは年々強くなっています。



続けていればこそ、進化していくこと。

続けていればこそ、退化していくこと。


劇団は生きものです。

人と同じように進化、退化が混ざり合いながら月日を重ねていきます。
出会ったすべての人たちとの化学反応を繰り返しながら、
シアターキューブリックという唯一の自然現象を最後まで見届けたいと思います。

これからもシアターキューブリックをよろしくお願いします。

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▲先日、シアターキューブリックゆかりの地のひとつ、千葉県の銚子へ行ってきました!
この日行けなかった伊藤十楽成、市場法子、敷名めぐみ、河野結も元気です!


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シアターキューブリック25歳! [きゅ~め~るのお題]

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いまだにとても信じられないことなのですが、
僕たちがやっている劇団は今年で25周年を迎えます。
結成記念日は2月27日ですが、2月7日に発信された劇団のメールマガジンで、
「メンバー全員が『シアターキューブリック25歳!』のお題目でブログを書く」
というミッションがあり、誕生日よりちょっと早いのですが25歳を迎える劇団について。






書いては消して、消しては書いて……(ラブレターかよ(笑))




そうこうしているうちに日付が変わってしまったではないですか。





ごめんなさい!このお題、僕にとっては非常に重たくて、
実際の結成記念日にならないと25年を迎えた本当の気持ちが降りてこないため、
その時にあらためてちゃんとお伝えしたいと思います。

メンバーのみんなは20日も早く書けるのかな……。




あり得ないくらい空っぽな記事を書いてしまいました。
思っていた以上に、劇団の25年について語るということは重たいものでした。

そして、こうして「25年」とキーボードを叩いてみると、
ほんとうに25年になるんだなあという気持ちが心に広がってきますね。

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お腹の中へ還る~岡村孝子さんのクリスマス・ピクニック~ [日々雑録]

毎日を生きていくことに忙し過ぎて、
自分が何者なのかが見えなくなってしまいがちな日々のなか、
「ああ、そうだ、自分ってこうだったわ」と思える時間に還れたとき、
僕はお母さんのお腹の中に戻ったような気持ちになります。
皆さんはそういう場所や時間がありますか。


僕の場合は、岡村孝子さんの音楽と言葉。
あみんの『待つわ』や、『夢をあきらめないで』で多くの人に知られる
シンガーソングライターの岡村孝子さん。
緑川にとっては生みの親と等しいほどに、この人の生んだ言葉や音楽によって、
「物書き」としての細胞がかたちづくられている、それくらいに大切な存在。


僕自身が手掛ける舞台作品でも『ミストラル』『世界中メリークリスマス』など
岡村孝子さんの楽曲を拝借して創作を重ねたり、と
いつしかこの人の言葉や音楽は僕の深くまで浸透し、
積極的に音楽を聴かなくなった時期も少しありましたが、
ここ数年は、ライブでこそ伝わってくる「思い」に
あらためて大きな力をもらっていることを思い出し、
コンサートにお邪魔するようになりました。



今の僕は、立ちはだかる大きな課題に、ちょっとくたびれてしまっていて、
自分って何がしたいんだっけ、自分って何だったっけ、
この先、どうやって生きていけばいいんだっけ、
ふと気づくと、そういう澱んだ闇に包まれることが増えてきていて。
先日、渋谷公会堂で行なわれたコンサートも、
「こんな時に出かけて、自分はちゃんと音楽を聴けるのだろうか」と思うほどに、
気持ちがそこに付いていけていませんでした。


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短い横断歩道でさえ青信号のうちに渡り切れないほどの渋谷の人ごみをくぐり抜け、
コンサート会場の渋谷公会堂へ。


会場は僕よりも少し年長のファンの方が多く、
皆さん、それぞれ長い人生を岡村孝子さんの音楽とともに歩んで来られたのだなあ、
それぞれの人生で抱えているいろいろな事と折り合いをつけて、
今日こうしてここに集まっているのだろうなあと、
いつも以上にそんなことを思ったのでした。



僕が中学生の時に聴き始めた岡村孝子さんの音楽は、
まだ10代の僕などには分からない人生の葛藤や不安や希望が詰め込まれていて、
学校の先生や親が教えてくれないようなことを、
情感溢れる言葉で耳打ちしてくれる心のバイブルでした。
いつの時代も、その音楽と言葉は、純粋で、まっすぐで、
人は生きていく中でそれなりに変容してゆくものだと思いますが、
岡村孝子さんの純粋さ、ひた向きさの「不変」は、やや異常にも感じられます。
35年間、僕が惹かれ続けているのはきっとそこなのでしょう。


「自分もこの人のようにありたい」


弱い自分が迷ったり、ブレてしまっていたりするとき、
この方が、今までと変わらない姿で僕らの前に立っていてくれる。
そのありがたさが、やはり神様のように思えて、
僕ももう少し頑張ってみよう、頑張れそうだな、そう思えたのでした。
そして5年前、突然白血病を患い、
もしかするともうこの人の歌を聴けなくなってしまうのかも、
と目の前が真っ暗になった日のことを思い出して、
あらためて胸が不安でぶるぶるしました。
お元気になって戻ってきてくれてほんとうによかった。



今回は後方から会場全体を見渡せる席でした。
僕はコンサートの最中、お客さんたちの横顔を眺めるのが好きです。
この日も、皆さんそれぞれにいろいろな想いを受け取っていました。
岡村孝子さんには、これからも優しい歌声と、選び抜かれた美しい言葉で、
たくさんの感動を届けてほしいと思います。

そして僕も等身大の美しい言葉で想いを伝えられる人になれるよう、
これからも生きていきたいと思います。


岡村孝子さんの言葉と音楽の魅力の事、
その音楽から考えさせられた事などを綴った過去の記事です。
よろしければご覧ください。

2017/07/02 NO RAIN, NO RAINBOW
2017/10/16 光と笑顔あふれる庭で
2017/10/16 光を照らす人、岡村孝子さん。
2017/12/15 岡村孝子さんのクリスマス・ピクニック
2017/12/28 「気」が光る場所へ ~岡村孝子さんクリスマス・ピクニック大阪公演~
2018/06/18 泥中に咲く蓮のように
2018/09/12 世界中メリークリスマス
2018/12/05 カムパネルラのもと~岡村孝子さんクリスマスピクニック大阪公演~
2021/09/08 岡村孝子さん復活の祝祭。
2022/12/04 一輪挿しの水を入れ替える~岡村孝子さんのクリスマスピクニック~
2023/05/16 岡村孝子クリニック受診
2023/09/22 岡村孝子さんの「まちの音楽会」へ。~ブレや揺らぎから感じること~
2024/05/19 岡村孝子さんは人生矯正装置~コンサートツアーT's GARDEN初日~


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えんぶさんが創るアートとエンターテインメントの街 [社長の時間]

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舞台ファンや演劇人にはお馴染みの、そうでない人も
書店のカルチャーコーナーで見かけたことがある人も多いはずの、
演劇専門誌「演劇ぶっく」(現在は「えんぶ」)さんが途方もない挑戦をされているのです。


それが『えんぶ☆TOWN』。

TOWNというからには「街」なんです。えんぶさん、街をせっせと作っているのですよ。
三次元ではなくWEB上でのことなのですが、WEB上だって実在することに変わりありません。

「作り手と観客が自由に行き交うアートとエンタテインメントの街」なのだそうです。
表現に関わる全てのジャンルの人たちが、楽しみながら得をする場所をつくりだそうという実験都市。

やばくないですか!?

僕を含め多くの劇作家の人たちは、劇場の舞台に、たとえ瞬間的であってもひとつの世界を創りたい、
そういう想いでいくつも作品を創ってきました。ある意味それは人々が行き交う「街」でもあります。
だから、えんぶさんのこの試みを初めて聞いた時、
「うわああ!これ舞台じゃん!」って鳥肌が立ったのを今でも鮮明に覚えています。


この壮大なプロジェクトはまだまだ始まったばかりで、
これからコツコツと高い山に登ってゆく、今はその登山口に立った、
そんな感じなのだそうです。

この大プロジェクトの成就に向けて
舞台業界の方々から寄せられたメッセージを見られるコーナーがありまして、
僕も大先輩の皆さんに交ざって、寄稿させていただいております。
よかったらご覧ください。
https://enbutown.com/yell_all/

そして、えんぶさんが創る新しい街に、ぜひお出かけください♪



えんぶ☆TOWN トップページ
https://enbutown.com/


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「ステイジーズ」が始まります! [社長の時間]

私たちネビュラエンタープライズは、
20年以上にわたり舞台業界の会社として活動してきましたが、
多くの劇団や公演制作会社のように舞台作品を創る会社ではありません。
お預かりした公演チラシを劇場で配布していただくにあたり、
チラシの束を作成する折り込み代行サービスを営んでまいりました。


複数のチラシを一つの束にする際、
外側から包む紙を私たちは「オビ」または「外オビ」と呼んでいるのですが、
この「オビ」の存在はチラシ束とは切っても切れない縁があるものでありまして、
私たちの前身企業、株式会社ネビュラプロジェクトの時代から一貫して、
この「オビ」とともに歩んできたと言っても過言ではありません。

しかし、この「オビ」という場所は、実はなかなか難しいポジション。
なぜならチラシ束の主役は、飽くまでも束の中に挟まっている多くの公演チラシであり、
なおかつ、このチラシ束が配布される劇場の上演作品の邪魔になってもいけません。
そのため、歴代の「オビ」たちはまるで舞台の黒子のように、あまり目立たぬように、
キャラが立ち過ぎない工夫や、場合によっては遠慮とも言える選択をしてきました。
その考え方が社名変更前の私たち、ネビュラエクストラサポート(Next)としての
会社のスタンスにもなっていったように思います。



4年前の2020年9月、私たちは株式会社ネビュラエンタープライズに衣替えし、
企業理念「どこまでも、人が集う幸せを求めて。」の実現に向けて、
あらゆることを見つめ直す視点を持ち、日々歩んでいます。
この「オビ」に関しても、私たちの理想を表現する大切な場所として、
クリエイティブなまっさらな心で考え直し、
そして、この度、新しいチラシ束の顔を創りました。

それがこの「ステイジーズ(STAGES)」です!

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タイトル「ステイジーズ」が指すものは、取りも直さず
世の中の、数多の舞台作品のことであり、
これら作品に対するワクワク感をいっぱいにしたい気持ちを込めました。
そしてメインキャラクターであるしろくまの「ぱんお」を中心に、
愛嬌のある5人(匹)のキャラクターたちが、オビの紙面で、
またある時は紙面を飛び出してWEB上で楽しいおしゃべりをします。
この「ぱんお」たち、5つのただ単純なキャラクターではなくて、
それぞれバックボーンやものがたりがあるんですよ。
それはこれから少しずつご披露していく予定です!
せっかく劇作家が社長を預かっている会社ですし、
舞台の魅力は、やはり演劇的に魅せていけたらいいなと思うんです。
僕としても初めての挑戦ですので、果たしてどういう展開になるか分かりませんが、
「ぱんお」たちの冒険の行方をあたたかく見守っていただけたら嬉しいです。


私たちは、多くの劇団のように舞台作品を創るチームではありませんが、
「舞台作品を創らない創作団体」として、
仲間と語らいながら、これからもたくさんの挑戦をしてまいります。
そして「ステイジーズ」を通して、公演団体の皆様とともに、
お客さんの観劇体験を盛り上げ、さらなる観劇機会創出に寄与してゆきたいと思います。

劇場でステイジーズを見つけたら、ぜひ「ぱんお」を可愛がってくださいね!


「ステイジーズ」についての詳細はこちらをご覧ください!!
https://note.com/nevula_prise/n/n00a29f7c65b2


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はじめてのビジネス交流会 [社長の時間]

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先週8月2日、江戸川区船堀駅前のタワーホール船堀にて行われた

第13回シグマバンクグループ ビジネス交流会に、

私たちネビュラエンタープライズ、初ブース出展させていただきました。




会社としての商機の獲得もとても大事なことではありますが、

まずは舞台芸術に馴染みのない方々に向けて、

舞台芸術のこと、その魅力を少しでも広めるためにも、

「何かひとつやってみよう!」ということで、初めて参加を決意しました。




チラシ折り込み代行サービスにて、無料で事前に募集した公演チラシを束にして、

会場にいらっしゃった他業種の方々に、当社のスタッフが直接チラシ束を手渡しました。

参加する皆さんはクリエイティブなアンテナを立て、

楽しそうな何かを探している人ばかりです。


もしかすると、ここで受け取った公演チラシをきっかけに、

劇場に足を運び、新たな舞台ファンになってくれるかも知れません。

そうした「創客」の可能性がある以上、

私たちは果敢に新しい挑戦を行なっていくべき、

とあらためて思いを強くした経験となりました。



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なにより「面白そうなこと」「誰かが幸せになれそうなこと」を目指す会社や仕事が、

世の中にはこんなにたくさんあるのか、ということを肌で感じることができました!


今回お声がけくださった小松川信用金庫の皆様、

今日私たちと出会ってくださった皆様、どうもありがとうございました!

舞台芸術と様々な業種の皆様が繋がり、新たな幸せが生まれる、

弊社がそのご縁を結べるような存在になっていきたいと思います。



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続『ベイクド・マンション』のこと [劇作家の時間]

『ベイクド・マンション』のこと、後半です。

前半の記事はこちらからどうぞ→ 『ベイクド・マンション』のこと



「演劇は総合芸術」と言われますが、特にシアターキューブリックの演劇は、
俳優陣の演技を外縁から彩るいくつもの要素が「多いほう」に分類されると思います。
監督のようでもあり、交通整理的立場でもある演出家という立場におりますと、
それらスタッフさん全員との「ものづくり」の時間があり、
たとえ1週間程度の舞台公演でも、何か月にもわたり様々な創作の場面があります。



毎回いちばん早くやってくるのは、
作品のシンボルになるイラストを描く絵本作家なかむらしんいちろうさんとのお仕事。
まさしく切り込み隊長の魔法使いです。
なかむらしんいちろうさんは、僕の脳みそをきっとどこかから覗き込む才能を持っていて、
必ずイメージ通りに、そしてイメージをはるかに上回る緻密さで、
作品のシンボルとなる絵を描いてくれます。
精巧すぎるその描写には、いつもちょっと引くぐらいの衝撃があります(笑)。
今回もまるで曼荼羅絵のようなベイクド・マンションのシンボルが、作品とお客さんを繋げてくれました。
いつもはそこで終わってしまうなかむらしんいちろうさんとの共同作業ですが、
今回は劇中の最後で出てくる絵画も描いていただきました。
まるでラスボスのようなその絵の存在感に、
なかむらしんいちろうさんのこれまでの人生と共演できた重たさと喜びを感じました。


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なかむらしんいちろうさんが描いたメインイラストを宣伝媒体に変身させる
グラフィックデザイナー・廣神法子さんの魔法。
イラストの魅力は殺しちゃいけない、でも情報は分かりやすく載せなきゃいけない、
廣神さんのポジションの匙加減ってほんとに難しいと思うのですが、
思わずにやけてしまうくらい、素敵にラッピングしてくれるのです。
なかむらさんのイラストを受け取った衝撃も冷めやらぬタイミングで、
立て続けに廣神さんからも強烈なパンチを喰らいます(笑)



僕が舞台でやりたいことをなぜかいつも驚くほど汲み取ってくれる
舞台美術・八木橋貴之さんの魔法。
実は八木橋さんの美術でシアターキューブリックの公演をやるのは今回が4公演目なのですが、
その事実が信じられないほど、八木橋さんとシアターキューブリックの世界がフィットしています。
しかも細かいところの質感や遊びにも一つひとつこだわりがあって、
ファンタジーの世界に繊細なリアリティを吹き込んでくれるのです。
1週間でさよならするのが、いつも淋しい。でもそれが舞台美術の宿命。

これまでに八木橋さんが手がけたシアターキューブリックの舞台美術 → こちら!



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舞台上だけでは伝えきれない俳優陣の魅力を切り取ってくれる、
カメラマン・渡辺慎一さんの魔法。
パンフレットの紙面に並ぶ俳優陣は舞台上の彼らとはまったく異なる魅力に溢れていて、
ギャップ萌えの僕は、舞台上と紙面の彼らを頭のなかでくるくるさせて、楽しんでいました。
撮影しながらの渡辺さんとの会話が、実は僕の創作の楽しみのひとつになっていて、
渡辺さんが感じるキューブリックの現場の特徴を話してくださったり、
楽しいおしゃべりのなかでいろんな発見があるんです。



一度のゲネプロで3000枚を超える舞台写真を撮ってくださる、
もうひとりのカメラマン・宮内敏行さんの魔法。
1ヶ月以上にわたる稽古で何度も見てきたはずの場面や俳優たちの姿や表情。
川のように流れ続けてゆくそれら感動の一瞬を掬い上げてくれます。
なかには、演出家の僕でさえ初めて見る瞬間もあったりして、
舞台っていろいろなことが同時に起きている世界なんだよなあ、とあらためて思います。




もう23年もともに作品を創り続けている振付師・森川次朗さんの魔法。
時には演出家以上に、作品のテーマや質感、素材となる俳優たちの魅力を把握し、
物語の世界へお客さんをいざなう、とても大事な時間を作ってくださる次朗さん。
演出家の範疇と重なっている範囲が多いポジションのせいか、
作品づくりの過程で、侃々諤々話せる人という意味では唯一の存在かも知れません。
なにしろ23年です。半端でありません。


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今回初めてご一緒した舞台監督・吉田慎一さんの魔法。
お客さんの視点では、舞台監督さんってすごく目立たないポジションなんですが、
劇場に入ってから各セクションがスムーズにまわっていくには、
舞台監督という仕事が超重要で、このポジションの人柄次第で劇場の空気感が変わります。
吉田さんは一見コワモテさんなのですが、作品のことをすごく把握してくださり、
演劇を心から愛している人なんだなあということが滲み出ている人です。
本番前に行なうダンスリハーサルの役者たちを見ている優しい横顔が、僕はとても好きでした。



2000年の旗揚げ公演からずっとパートナー、照明プランナー・森規幸さんの魔法。
シアターキューブリック作品のキラキラを守り続けてくれています。
こんな優しく美しい光の世界を創る照明さんを僕は知りません。
1999年、知人の照明さんを介して、東中野駅近くの小さな居酒屋で初めて会ったのが、
僕が23歳、森さんが24歳の時。
「来年、劇団を旗揚げするんです。キラキラした世界を創りたいんです。」
恥ずかし気もなく、僕はそんなふうに話したのを覚えています。
森さんはその言葉をきっと、ずっと覚えてくれていて、
だから今もシアターキューブリックの舞台の光はキラキラがすごいんだと思います。




音響プランナー・田上篤志さん、音響オペレーター田島誠治さんの魔法。
何しろ僕の音響の耳は田上さんによる薫陶を受けて鍛えられたくらいなので、
シアターキューブリックの臨場感を重んじる音響は田上さんがルーツ。
緊張感が高まってくる稽古終盤、田上さんが稽古場に登場すると、僕を含め一旦みんな脱力します(笑)
そんな癒し系のキャラだったりもします。
キューブリックの現場で、僕のことを呼び捨てで呼ぶのは
おそらく田上さんだけじゃないかな…、旗揚げからの仲です。
「ミドリカワが好きな音域は63Hzな」。(^_-)-☆
そして、その田上さんとともにキューブリックの音響で欠かせない田島さん。
観客にとっていちばん気持ちがいいチューニングをピンポイントで探し当てます。
音楽だけでなくマイクの調整も、役者陣のコンディションを見ながらの神ワザ。
シアターキューブリックの音楽的情感、リズム感、臨場感を司る二人です。




「どんなふうに生きているとこんな感性になるんだろう…?」というヘアメイクLimoさんの魔法。
僕はきっとLimoさんと出会って創作の自由度が広がりました。
それまでは自分の中のイメージの振れ幅を最初から狭い範囲に設定して、
自分たちがやれそうなことを無意識に絞っていた気がします。
15年前の『ベイクド・マンション』初演も、
僕の想像力をぐわんと広げてくれたLimoさんのおかげで生まれたことは間違いありません。
そんなLimoさんと一緒に、再演のキャスト陣のビジュアルを創れたことが幸せでした。



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そして俳優業の傍ら、旗揚げから衣裳デザイン・製作を続けてくれている奥山静香の魔法、
同じく小道具全般の製作を続けてくれている千田剛士の魔法。
2つの要素は、俳優の動きと最も密接に存在していることもあって、
あまり目立たない魔法なのかも知れないですが(モノによっては逆のこともあり)、
作品のブランディングには欠かすことができないものたち。
それを旗揚げのメンバーが仕切ってくれていることは、
劇団としての創作活動の土台になっているんだろうと思います。
そして二人の持ち仕事は、実はこれだけではない、というのが凄いところです。
二人に限ったことではありませんが、劇団メンバーみんな凄いんです!ほんとうに感謝。




そして、劇場ロビーというもうひとつの表舞台を守ってくれている栗原千温さんの魔法。
この方の気配りの細やかさとバイタリティーはいったいどこからやってくるのだろう、
といつも不思議に思っています。
ちょっと頑張り過ぎて倒れてしまわないか心配しているのですが、
きっと栗原さんを思ってくれている人や支えてくれる人がたくさんいるのだと思います。
栗原さんの周りには羨ましいくらい、いつも人がいっぱいいます。
僕のような人間は到底足元にも及ばない徳を積んでいるのだと思います。
そんな人に支えてもらっている僕は、もっと頑張らなくてはいけません。



ほかにも、劇団メンバーの関係者や、シアターキューブリックOB、
親戚のような客演仲間等々が集まってくれて、陰に陽に公演を支えてくれました。
どうもありがとうございました。


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公演という一つの興行を通して見てみると、
稽古場と舞台上での、いわゆるお芝居本編の出来事が占める割合は、
実はほんの僅かであって(そのほんの僅かな中も大量のアイディアと労力があるのですが!)、
公演は、お芝居本編を脇や下から支える人たちの存在によってそびえるお城のようなもの。
演劇公演ってマジでものすごいプロジェクトなんだなあと思います。
各ポジションの存在の大きさを思うと、演出家って空気みたい。
その空気みたいな感じが好きで、長年やってるところもあるのですが。


その空気みたいなポジションの演出家であればこそ、
これら素敵なスーパースタッフの皆さんと一緒にお仕事できる場面があるのであって、
それはとても嬉しいことです。


舞台の裏側の出来事やそこで頑張っているすごい人たちをお客さんにご紹介することが、
作品を楽しんでもらうことを思ったとき、果たしていいことなのか、そうでないのか、
正直迷うところではあったのですが、
公演が終わった今なら、むしろこの作品を より愛してもらえるかも知れないと思い、
お一人おひとりとても簡単ではありますが、ご紹介させていただきました。





カーテンコールでいただく大きな拍手は、けっして舞台上に並ぶ俳優陣だけではなく、
彼らを支える多くのスタッフ陣に向けられたものでもあることを、
毛穴でビシバシ感じながら、毎ステージとてもありがたく感じています。


『ベイクド・マンション』はおかげさまで無事完走することができました。
これからも多くの仲間たちと一緒に、舞台の醍醐味を詰め込みまくった
「ザ・演劇」のシアターキューブリックの公演を創ってまいります。


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『ベイクド・マンション』公演ページはこちら ↓
https://www.qublic.net/baked2024/

『ベイクド・マンション』公演グッズショップはこちら ↓
https://qublic-goods.stores.jp/


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『ベイクド・マンション』のこと [劇作家の時間]

シアターキューブリックの最新公演『ベイクド・マンション』は、
7月17日に幕を開け、無事22日にその幕を下ろすことができました。
キャスト・スタッフ、最後まで一人として欠けることなく千穐楽を迎えることができたことを含め、
たくさんの奇跡に恵まれた公演となりました。
ご来場くださった皆さん、遠くから応援してくださった皆さん、
応援札やグッズのご購入で公演にご参加くださった皆さん、
ほんとうにありがとうございました。



今年で結成から24年を数えるシアターキューブリックですが、
これまで数えきれない危機を迎えては、挑戦を繰り返してきました。
渦中にいる時はとにかく必死なので「挑戦」の自覚はほぼ無いのですが、
千穐楽本番前の気合い入れの時、あらためて俳優たちの逞しくなった顔を見た時、
知らず知らずに多くの困難を自ら設定し、それを乗り越えてここまで来たんだなあ、と
ハタと気がついたのでした。

2009年4月初演の『ベイクド・マンション』は、実に15年ぶり、今回が初の再演でした。
僕ら劇団員の認識のかぎりでは、この作品はどちらかといえば「イロモノ」的公演で、
『葡萄酒いろのミストラル』『誰ガタメノ剣』等の
シアターキューブリックの王道といわれる作品とは距離を置いた、ある種「変わり種」でした。
そうした作品をなぜ今、上演しようということに決めたのか、
劇団の会議等で誰からも具体的な言葉で語られる場面は無かったと記憶していますが、
きっと「挑戦」だったんだと思います。

ここ数公演、比較的堅実なテーマやテイストの作品を上演してきて、
あらためて演劇に対する自分たちの「自由度」のようなものを試したかったのだろうと。
少しずつ齢や経験を重ねてきて、今の自分たちがどこまで一生懸命「バカ」になれるか。
この作品は重いテーマである一方で、呆れ果てるくらいバカバカしい場面がたくさんあります。
そういう場面で、いい齢をした大人がバカになれる(なってみせられる)のは実は大変難しいことなのです。
シアターキューブリックの作品では、そういう場面が出てくる作品は多くはありません。
稽古場でも、親子ほど齢の離れた演出家が若い女優に向かって、
いったい何をリクエストしているんだ…と恥ずかしくなる時がたくさんありました。
(ご覧になった方は、「ああ、あのシーンかな」と思うことと思います(笑))



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この物語の主人公「かなえ」には、今年入団したばかりの坂本実紅を配役しました。
役には主役脇役かかわらず様々な困難が伴います。
簡単な役なんて、この世にありませんが、
特に主役には、主役ならではの大きな困難や孤独感があって、
見方によっては、主役は作品の「贄」のような存在です。
それもあって、ここ数作品は贄の役割を確実に果たしてくれる俳優をこの位置に配してきました。
ただ、今公演はその確実性を後回しにしてでも、
劇団として前進するための挑戦をせずにはいられず、
「小柄の大型新人」坂本実紅に賭けたのでした。
おそらく坂本実紅本人も、
自分の実力以上のミッションが課せられたことをビンビン感じていたと思います。
稽古序盤はそれを乗り越えようと、とにかく「頑張る坂本実紅」がいっぱいいた気がします。
ただ、頑張る一辺倒だと、やはりこの作品の壁は越えられないのです。
まるで作品の主人公「かなえ」のようでした。
しかし坂本実紅はとてもクレバーな女優なので、見事に軌道修正してきました。
さらに、そこには共演者というとても大きな存在がありました。
坂本実紅のことを「支えたい」「一緒にお芝居を楽しみたい」と心から思ってくれるキャスト陣。
共演者たちをそういう気持ちにさせることができる坂本実紅のガッツと素直さ。
キャスティング作業の時、おそらく僕は彼女の“そこ”に賭けたのだと思いました。
この先どれだけ経験を積んでも、ずっと変わらずにいてほしい最大の魅力です。

もちろん坂本実紅だけではありません。
作品のことを愛し抜いてくれる素晴らしいキャスト陣に恵まれ、
本番の初日が開いてからも、少しでも上を目指し、新しい何かを求めて、
ぐんぐんと変化し続ける16人の奇跡を目撃させてもらいました。
10回の本番があると、一度くらいは演劇的キラキラに翳りが見える時があるのですが、
今回はついに一度もその翳りを感じることなく千穐楽まで辿り着くことができました。
それはチーム全体で「過ぎてゆく無常」を感じる空気があったからじゃないか、と思います。

「今はあっという間に過去になる」

かたちを残すことができない演劇の宿命です。
作り手である僕らは、それを武器にし続けなければなりません。
その情熱をチーム全体で共有できれば、奇跡はまた生まれるのかも知れません。



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そして、作品そのものについて。

初演から15年の時間が経過し、あらためてこの物語の表紙をめくってみて、
ようやく、この作品の本質と落ち着いて向き合えた気がします。
主人公「かなえ」が求めていた人生の逃げ場は、当時の僕にとってもまた必要だった場所で、
そういう場所を必要とする人間の思考を俯瞰的に捉えることができて初めて、
登場キャラクター全員の存在意義を分析することができるのだと。

15年前の自分は、作品を生み落とすことに精一杯すぎて、
すべてを感覚的に捉え、言語化できないまま作品を創っていたのだろうと思います。
それは稽古の進め方だけではなく、脚本もまた然りで、
自分の夢の中で“誰かから授かった”物語であるだけに、
その誰かに対して感謝の気持ちを表したくなったのか、
殊更「元気になった(風な)自分」を表現してしまっていました。

それは作品にとっては本来不要なものです。
そして後半部分は大きく書き直さねばならないと感じました。
大きく書き直したことで、
主人公かなえの成長度や、苦悩を乗り越えスランプから脱する、
いわゆる物語としての劇的変化の幅は、うんと小さくなりました(ほぼ無くなったとも言えます)。
その代わりに、同じ苦悩でループし続ける現実、人はそんなにすぐには変われない生きもの、
という人間の哀愁を浮き立たせたい、その一心で新しいラストシーンを書き上げました。
分かりやすいハッピーエンドの感じがなくなっても、
七転八倒しながら生き続けている人たちに向けた眼差しは濃くなったのではないか、と。
これこそがシアターキューブリックの本質ではないかと思うのです。
ハッピーとかバッドとか、人が生きるってそういう単純なことではなくて、
世間的にネガティブとされる感情も含めた何層もの感情がいつもぐるぐるしていて、
みんな、それがふつうのことで、だからそれでいいんだよ、と。

再演でありながら、後半は新作。
33歳だった自分が生み落とした感情の発露と、現在を生きる48歳の自分の考察が、
同じ時代を生きる人や社会に伝えたいメッセージとなって、
新たな物語としてこの世に生まれることができた、
今はそんな気持ちでいます。



ここまででこんな長文になってしまっているのに、
シアターキューブリックの公演を語るとき、
絶対欠かすことのできないスーパースタッフ陣のことをまったく書けていません……。


というわけで、『ベイクド・マンションのこと』、今日は前編でした。


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もうすぐ舞台の幕が開きます [劇作家の時間]

来週7月17日(水)、僕が手がけている劇団の公演の幕が開きます。
15年前、33歳の時に書き下ろした17作目の物語『ベイクド・マンション』という作品。


冗談のように聞こえるかも知れませんが、
この物語は僕の夢の中で出来上がっていきました。
「夢」というのは、夜、眠っているあいだに見る、夢です。
同業の人が聞いたら「それ最高じゃん、そんなラクなことはないね~」
と思うかも知れません(笑)

確かに物語を考えて形にしてゆくまでの工程は
毎回気が遠くなるような壮大な時間と集中力といろいろな犠牲を要します。
ただ、夢の中で生まれたからと言って、そんなラクだったわけでもないんですよ。
アイディアや構成やキャラクターが生まれてきても、
それを実際、脚本化し、稽古場で立体化してゆく作業は、
ふわふわ漂っている雲や靄を掴んで、それらの形を整えていくような、
むしろ自分がゼロから創る作品よりも大変なこともありました。
さすがに物語の終盤までは夢のなかで生まれては来ず、
途中からは自分がバトンを託され、書き進めるような感じでした。


にもかかわらず、15年経って初演のラストシーンを読んでみると、
まるで自分の作品ではないようなラストでした。
ものすごく分かりやすい言葉、ものすごく前向きな主人公の感情。
この2つだけ取ってみても、シアターキューブリックの他の作品のラストとは異なります。
ラストはいったいどうしてこんなふうになったんだろう……と15年後の僕は考えました。



僕は夢のなかで、誰かから励まされていたんだと思います。
そして、『ベイクド・マンション』という物語を(途中まで)プレゼントされた、、、
だから、その誰かからプレゼントを受け取った僕は、
ラストシーンで、僕を援けてくれたその誰かに対して、
感謝の気持ちを見せたかったのだと思います。
「ありがとう、あなたのおかげで、僕はこれだけ元気に、前向きになれました」と。

それが、シアターキューブリックのラストシーンとしては、
他に類のない、非常に前向きなものになったのだと思います。



15年経ってふたたびこの作品を上演するにあたり、「コレ」はこのままでいいのだろうかと、
相当考えました。

僕の場合、ふだんの執筆ではラストシーンのイメージに向かって全体を構成してゆくため、
「ラストシーンをどうすべきか?」などと頭を悩ませたことはこれまでありませんでした。
そして、きのう稽古場で16人の仲間たちと共に新しい『ベイクド・マンション』を
初めて全編通して稽古して、作家としての僕はとても安堵したのでした。

15年前の、人生を迷いまくっていた自分にも、
そんな自分に、夢のなかで救いの手をさしのべてくれた誰かにも、
この作品をちゃんと見せられると。

そして、いま、同じこの時代を生きている多くの人たちにも。




作品の見どころや受け取り方の幅がここまで広い作品も珍しいだろうと思います。
それだけに、創作の現場での試行錯誤もなかなかのものでした。
その試行錯誤の足跡も含めて、創作に関わった人たちの手垢がいっぱい付いた、
「ザ・演劇」が出来上がりつつあります。

ぜひ、劇場でナマの演劇を「体感」しにきてください!



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★★公演情報★★

シアターキューブリックver.37
焼け残る瓦礫たちと踊る、ほろにがファンタジックホラー
『ベイクド・マンション』
作・演出 緑川憲仁

2024年7月17日(水)~22日(月)
恵比寿・エコー劇場

CAST
片山耀将 奥山静香 千田剛士 坂本実紅
高橋茉琴 大竹えり[少年社中] 野田翔太[劇団扉座]
七味まゆ味[柿喰う客] 鈴木研 冨田恭子 水谷千尋
水野未渚 花田千紘[劇団fool] 熊谷嶺
入江友 大月芽伊[劇団M.M.C]

公演特設サイト
https://www.qublic.net/baked2024/

チケット購入ページはこちら!(劇団のグッズオンラインストア)
https://qublic-goods.stores.jp/

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きっと僕だけじゃない。 [劇作家の時間]

きっと僕だけじゃない。
暗い心で朝を迎え、それを消したくて明るく振る舞うほど、
逆に自分のなかで暗い心が大きくなっていったり、
たまにはうまく自分のことを騙せて、
いま最高に楽しい!と思えた次の瞬間に
ブラックホールのような闇が「俺のこと忘れちまったのかよ…」と
大きな口をあけて待ち構えて、僕を吸い込んでいったり。


自分のようなお仕事をしていると、派手なイメージがあるのか、
「賑やかで楽しそうですね」と言われることが多いのですが、
そういったイメージは一連の作業の最後の最後でお客さんが目にする
俳優たちが立つ舞台がそのように見える(そのように見せている)のであって、
僕のような裏方の仕事はクソ地味で、孤独で、その気持ちを誰とも分かち合えなくて、
向き合っている時間ほぼすべて、くじけそうになっている(僕の場合ですが)。


でも、これって僕だけじゃないと思うのです。
どんな仕事に就いて、どんな人生を歩んでいる人でも必ず持っている、
傍から見るだけでは分からない、人が抱えているブラックホールみたいな孤独。
そして、僕だけじゃないと思ったから、作品にしたいと考えたのだと思います。

「ファンタジック・ホラー」などと銘打っていますが、
それは飽くまでも作品の「装い」の話であって、
今回の『ベイクド・マンション』という作品は「孤独」のお話です。
自分を含めた、たくさんの人がそっと抱え続けている孤独に寄り添いたい、
そんな気持ちでお話を書き、稽古に向き合っています。



本日6月15日、チケットの一般前売が始まりました。
「異種格闘技」を思わせる最高の役者たちが集結しました。
彼らとともに今回もお客さんが体感できる作品を目指して創作しています。
ぜひ劇場でナマの演劇を体感してほしいです。

ご予約は劇団のホームぺージから簡単にできます!
皆様のご来場、お待ちしています。


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シアターキューブリックver.37
『ベイクド・マンション』
作・演出 緑川憲仁

CAST
片山耀将 奥山静香 千田剛士 坂本実紅
高橋茉琴 大竹えり[少年社中] 野田翔太[劇団扉座]
七味まゆ味[柿喰う客] 鈴木研 冨田恭子 水谷千尋
水野未渚 花田千紘[劇団fool] 熊谷嶺
入江友 大月芽伊[劇団M.M.C]


https://qublic.net/baked2024/
購入前に《ご来場のお客様へのお願い》をご確認ください

日時
7/17(水)19:30★めでたい初日割★
18(木)14:00/19:30
19(金)14:00/19:30
20(土)13:00/17:00
21(日)13:00/17:00
22(月)15:00

会場 恵比寿・エコー劇場(渋谷区東3-18-3)
JR恵比寿駅西口/東京メトロ日比谷線 恵比寿駅 徒歩約5分

チケット【全席指定席】
一般前売…5,500円
U_18割…2,000円
めでたい初日割…5,000円
ペア割(2枚1組)…10,000円
墨田区民割…5,000円(墨田区がホームグラウンドなので!)
当日券・当日精算…+500円


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