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24歳になりました☆ [きゅ~め~るのお題]

おかげさまでシアターキューブリックは
今日2月27日で結成24周年を迎えました。
近くから、遠くから、変わらずご声援を送っていただいている皆様、
あらためて、いつもありがとうございます。

10年、20年、と大きな節目を通り過ぎるにつれ、
「周年」といった節目の印象の強さよりも、毎日コツコツと
小さなものを積み上げてゆくことの大事さを感じるようになりました。
それから、いま、ここにいて、ともに活動に向き合っている仲間や、
その活動を応援してくれている人たちの存在、言葉、表情も。


なので、2月27日を迎えたからと言って、
あらためて特別な気持ちが芽生えたり、ということは年々薄らいできました。
自分の中では、これは進化だなと感じます。


これまで歩いてきた24年の時間の中の、うまくいったことよりも、
むしろうまくいかなかったことの体験の蓄積が、
僕の気持ちをこのように変えているような気がします。
そう思うと「うまくいかない体験」というのはとても大事なんだなあと。

これから先、いろいろなことがうまくいくように、
過去のうまくいかなかった体験を活かしていこうとは思っているけど、
うまくいかないことを避けてしまっては、
かえってうまくいかなくなっちゃうのかも知れないですね。



こんなふうにぐにゃぐにゃと考える癖は変わらずです。


劇団も、僕も、変われないものをこうしてあたためながら、
少しずつ変わっていくことを皆さんと楽しんでいきたいと思います。


これからもシアターキューブリックをよろしくお願いいたします。

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写真の面々プラス伊藤十楽成、市場法子、敷名めぐみ、河野結も元気です!

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新しい仲間が増えました [きゅ~め~るのお題]

シアターキューブリックに久しぶりの新メンバー!実に9年ぶりです。
しかも完全な初顔さんではなくて、既に劇団公演にも二度出演してくれている
坂本実紅(さかもとみく)を劇団メンバーとして迎えることになりました。


シアターキューブリックは劇団結成から24年目。
創立当初は20人近くいたメンバーも、さまざまな理由や事情で劇団を去っていき、
10年目くらいまでは1年か2年に一度オーディションを開き、新メンバーを迎えていたのですが、
次第に既存のメンバーと客演の俳優をメインに作品づくりをするようになっていきました。

興行としての作品づくりの過程では、企画や運営等たくさんの場面があり、
気心知れた劇団メンバー同士とはいえ、
コミュニケーションが困難なこともまったく無いというわけではありません。
ですが近年、少なくなったメンバーでそれらの議論を進めてゆくなかで、
それまでにはなかった、劇団としての濃度を増してゆく実感がありました。
そして気づくと、とても自然なかたちで新しいメンバーを迎える流れになっていました。




さて、新しく僕ら家族の一員となった坂本実紅について紹介します!

2018年11月公演『十二階のカムパネルラ』の出演者オーディションが初対面でした。
アイドルもやり舞台女優もやるマルチな女の子で、最初の印象は
とても頑張り屋で、ちょっと肩に力が入り過ぎじゃないかしら…?という感じでした。
演出をするからには、もっとこの女優さんを知っておかねばと、
彼女が出演する公演にいくつも足を運びました。
「こんなに頑張っているんだから、もっと成長したっていいはずだ」
ウチの現場が自分の成長を実感する場所になってほしいし、してもらわなきゃ困る!
そう思いました。

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▲2018年11月上演『十二階のカムパネルラ』にて。



『十二階のカムパネルラ』の次の『幸せな孤独な薔薇』で声をかけた時には、
すでに単なる「客演女優」ではなくて、
是が非でもこの作品で一皮剥けてほしい、それに貢献したい、
そういう想いで出演のオファーをしたことを覚えています。
つまり、この時すでに「人間どうし」の交わりがあったのだろうと思います。

『幸せな孤独な薔薇』で彼女が演じた役は、
主人公の傍らにぴったり付いて、心の葛藤を浮き立たせる、
とても地味なミッションを背負った難しい役で、
稽古では坂本の苦渋の表情ばかり見ていた気がします。
僕も相応の覚悟で臨んでいたので、若干厳しめになっていたのかも知れません。
この作品は2020年4月に上演予定でしたが、新型コロナによって
公演延期を余儀なくされ、稽古は一度ストップしてしまいました。
そしてリベンジの公演が決定し、約1年後に稽古を再開した時、
そこにいた坂本実紅は「坂本に酷似した別人なのでは!?」というくらい、
逞しく、しなやかな「俳優」になっていました。
きっとよほど悔しい思いをし、それを糧に自分と向き合い、
人間として、作品の登場人物たちと向かい合ったのだろうと思いました。
演出の僕は心の中で「勝った(=舞台の幕を開けられる!)」と思いました。

それから2年、ロバート秋山竜次さんの「クリエイターズファイルEXPO」全国ツアーにも
キューブリックメンバーと一緒に参加したりしながら、
とても自然なタイミングで今日の日を迎えた、というそんな感じです。

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▲2021年5月上演『幸せな孤独な薔薇』にて。





坂本実紅の印象はお顔が派手めということもあり(笑)、
一見、ノスタルジックなキューブリック作品の世界観とは必ずしも合致しないかも知れません。
そのギャップも僕は好きです。
でも、目には見えない彼女の内側は、シアターキューブリックの作品がまとう
たくさんの要素がたくさん湧き出ているように思います。
中には今の彼女が自分で気づいていないこともたくさんありそうです。
そういうものを作品づくりの過程で一緒に発見していく日々を過ごせたら幸せだなあと思います。

シアターキューブリックの一員としての俳優・坂本実紅を、
たくさんのお客さんに堪能してもらえるよう僕らも頑張ってまいります。
みなさん楽しみに待っていてくださいね!


超長くなっちゃった……


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誰かが誰かを見ている情景 [日々雑録]

自分でもワンパターンだと思う事があります。
シアターキューブリックの作品のラストシーンで極端に多いのが、
「誰かが誰かを見ている情景」。
劇団外部への脚本も含めれば40本くらいある緑川の作品のうち、
半分くらいはコレなんじゃないでしょうか……。



「物書きとしての緑川の細胞は岡村孝子さんの言葉と旋律で出来ている」
と日頃から言っている僕ですが、
岡村孝子さんの音楽と同じくらいに、幼い自分のこころに一瞬で刻まれた音楽があります。
その音楽が、その後の自分の癖(へき)となり、
やがて作品の場面としても頻繁に描かれることになったのではないかと、
時々思い出します。



僕が小学校3年生くらいの時に聴いた松任谷由実さんの名曲『ノーサイド』。


松任谷由実さん作詞・作曲、松任谷正隆さん編曲のこの曲は、
高校ラグビーのとある試合で、
劣勢だったチームがゲーム終了間際、同点まで僅かのところまで迫り、しかし力及ばず敗戦した、
という場面をテレビ観戦していたことが、曲が生まれるきっかけだったそうです。

当時は人生の辛酸なんてまったく分からないクソガキだった僕ですが、
この曲を耳にした時、敗れた選手と、それを静かに見ていた人物の感情と情景が溢れてきて、
なぜだか恐怖にも似た気持ちになった僕は、その後この曲をあまり聴けなくなりました。

「ユーミンはこわい」。

子供の僕はそんなふうに思ってしまったんですね(笑)
ユーミンの慈悲深い歌声が、逆に計り知れない怖いものに感じたのでしょう。
僕はあまりユーミンは聴かないで大人になりました。
そんな記憶もすっかり忘却の彼方となって、
華やかなエンターテイメント「シャングリラ」を観に行ったり、
大人としてユーミンの音楽を楽しめるようになったのですが、
やっぱり時々、この曲のことや、この曲を聴いて生まれてくる情景を思うんですよね。


そしてある時、この情景と似たものが身近にあることに気がつきました。
自分が書く脚本の結末です。
かなり高い頻度で、この曲に出てくる人物のように、
「誰かが誰かを見ている。」
そこに台詞はありません。ただ見ているんです。
しかも、この曲で歌われている選手のように、
志半ばで敗れた人、孤独な気持ちで立ち尽くしているだけの人を。

そういうものに、なぜだか美しさを感じるのです。
ゴールを外した選手も美しければ、
何の言葉もかけず離れた場所でそれを見ている人も。


そうした情景を見せながら物語の幕を下ろしてゆく自分の脚本が、まあ多いこと。
もしかすると脚本だけではなく、現実として生きている僕もまた、
グラウンドと客席に立つ二人のように存在しているのかも知れません。
そして、そんな僕のことも誰かに見ていてほしい、
という願いもあるように思います。
もしも、今まで観てくださった緑川の作品がありましたら、
ラストシーンをちょっと思い出してみてください。
かなり高い率で、誰かが誰かを見ていると思います。



48年生きてきて、きのうは大阪で25年ぶりに幸せな再会がありました。

帰り道、まるでタイムマシンのような新幹線のなかで、
今まで出会った人や情景たちをボーっと考えていたら、
少年の心を隠し持ったままの僕のもとへ、この曲がまたやってきました。
やっぱり今でもちょっと怖いです(笑)


「人々がみんな立ち去っても私 ここにいるわ」


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岡村孝子さんの「まちの音楽会」へ。~ブレや揺らぎから感じること~ [日々雑録]

かれこれ20年以上、劇作家という仕事をしていますが、
脚本執筆、舞台演出という一見派手に思える超地味な作業を続けるなかで、
不安なとき、創作に迷ってしまったとき、
自分自身が立ち返れる「みちしるべ」のようなものが必要になったりします。
僕の場合、それは岡村孝子さんの言葉と音楽。


シンガーソングライターの岡村孝子さん。
かつては「OLの教祖」と呼ばれ、今では逆に男性ファンも多い岡村さんですが、
14歳の時から岡村さんの音楽に導かれて生きてきた僕にとっては、
親や学校の先生では教えてくれない、人生の苦悩や生きるということのヒントを、
体育館の裏でこっそりと教えてくれるような、お姉さんみたいな存在。
そんなお姉さんみたいな岡村孝子さんのコンサートに出かけてきました。



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今回は岡村さん単独のコンサートではなく、
フォークシンガー三浦和人さんとのコラボレーション。
宝くじの社会貢献事業の一環として行われている音楽会で、
そのため、チケット代がたったの2000円という、
宝くじを買う習慣のない僕にとっては大変申し訳ないお値段でした( ;∀;)

三浦和人さんは長くラジオパーソナリティを務められてきたこともあって、
おしゃべりがとても楽しくて、
叙情的な歌とのギャップがすごく魅力的な方でした。
岡村孝子さんとは相当久しぶりの再会だったようですが、
二人の息もぴったりで軽妙な会話も楽しめる素晴らしいコンサートでした。




岡村孝子さんはコンサートのなかでいつもお客さんに質問をします。
「私、岡村孝子のコンサートにちょくちょく来てるよ、という人」
「今回初めて来ました、という人」
その質問に、お客さんは拍手で返します。

すると相当数の方が「ちょくちょく来てる」という返事を拍手で返します。
僕も含め、かなりの数の方が繰り返し足を運んでいるんだなあ、
ということを実感します。



41年も音楽活動を続けている岡村孝子さん、
これまでに作った楽曲は何百にものぼりますが、
コンサートで歌う曲はわりと決まっています。
もっともっといろんな曲を聴いてみたいなあ、と思わなくもないですが、
同じ曲でも、同じにはなりません。それがライブのライブたる所以です。

曲の歌詞やメロディは同じでも、
それを歌う岡村孝子さんは人間で、
それを聴くお客さんも人間なので、
必ずそれぞれの人生を更新しながら、その曲と「再会」します。

そして、歌手はロボットではありませんから、
歌声には必ずブレや揺らぎがあります。
そのブレや揺らぎを好まないお客さんもいるかも知れませんが、
僕は、その日ごとに違う岡村さんのブレや揺らぎをこそ感じたい、と
劇場へ足を運んでいるように思います。


僕が仕事としている舞台公演もきっと同じです。
物語を伝えることももちろん大切なことですが、
僕は物語を通じて、人間のパワーを共有したい、
そのためにはキャストそれぞれの人間としての息づかいを
お客さんに感じてほしい、と思いながら創作を続けてきました。
作品(役柄やセリフ)は飽くまで道具のひとつなのだと。


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岡村孝子さんの曲には、
「互いに同じ時代を生きている」という意味のフレーズがいくつかの曲に登場しますが、
まさしく、ライブでの岡村孝子さんのブレや揺らぎには、
これを感じられる喜びがあります。
それは歌を歌うどの人にもあるものではなく、
相手のこと、仲間のこと、ファンのこと、音楽のことを強く思う岡村孝子さんの心があって、
その結果、ブレや揺らぎの瞬間にその思いが木漏れ日の光線のように不意に出てくるのだろうと。


思い出すのは、かつて岡村孝子さんの楽屋にご挨拶させていただいた時、
挨拶を済ませ帰る僕を、通路の角を曲がるまで見送ってくださったこと。
その時は恐縮と戸惑いだけでしたが、後から音楽を聴きながらそのことを思い出すと、
「そりゃ、やっぱりそういう人だよね」という納得感いっぱいの素敵な思い出。

つまり、ライブエンターテインメントは、
作品を観に行くようでいて、音楽を聴きにいくようでいて、
本質は、演者の「こころ」を感じに行くのだろうと。



僕は作品を発信する側でもあります。
これからいくつの舞台を作れるか分かりませんが、
そのことを何よりも大事に作品づくりをしていきたいです。

14歳から僕を導き続けてくれている岡村孝子さん。
34年経った今も、たくさんの大切なことを教え続けてくれるお姉さん。
いつまでも元気でいてほしいです。



まだ岡村孝子さんのコンサートに行ったことがない方、
ぜひ一度、体験しに行ってみてください。
そして「初めてきたよ、という人」という質問に拍手で応えてみてください。

「初めまして。私が岡村孝子です。」

という、とびっきり誠実で可笑しい瞬間に出会えますよ(#^.^#)
「私が」という部分がミソです(笑)


次のコンサートツアーは12月に東京、名古屋、大阪です~。



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岡村孝子さんの言葉と音楽の魅力の事、
その音楽から考えさせられた事などを綴った過去の記事です。
よろしければご覧ください。

2017/07/02 NO RAIN, NO RAINBOW
2017/10/16 光と笑顔あふれる庭で
2017/10/16 光を照らす人、岡村孝子さん。
2017/12/15 岡村孝子さんのクリスマス・ピクニック
2017/12/28 「気」が光る場所へ ~岡村孝子さんクリスマス・ピクニック大阪公演~
2018/06/18 泥中に咲く蓮のように
2018/09/12 世界中メリークリスマス
2018/12/05 カムパネルラのもと~岡村孝子さんクリスマスピクニック大阪公演~
2021/09/08 岡村孝子さん復活の祝祭。
2022/12/04 一輪挿しの水を入れ替える~岡村孝子さんのクリスマスピクニック~
2023/05/16 岡村孝子クリニック受診


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久しぶりにリピートした映画のこと [日々雑録]

中学生当時、南野陽子さんのファンだった頃(今もですが)、
有楽町東映で主演映画『菩提樹』を朝から夕方まで3回連続で観ました。
あの頃、映画館は入れ替え制ではなくて、ずっと客席に居られたんですよね。
昔はそんな時代もありました。

大学時代、キャラメルボックスに就職する前の一ファンだった頃は、
1カ月間の公演の前半と後半で、二度は足を運び、
演劇作品が日々変わり続けてゆく様子を見届けたりしていましたが、
映画や演劇の同じ作品をリピートして観るということは、今はまずありません。



先日、とても久しぶりに一度観た映画を、もう一度観に行きました。

数多の作品に触れる機会に恵まれたエンタメ業界で長年仕事を続けていて、
作品との出会いのインパクトも薄らいでしまっている自分を淋しく感じていましたが、
自分の心にひっかかった作品にもう一度会いにいく、という行為は、
一個人の衝動に正直に向かい合う、祈りにも似たとても大事な時間でした。


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深川栄洋監督、宮澤美保さん主演の映画『光復』。

まだどこで上映があるか分かりませんので、
ネタバレに繋がるような表現は避けたいと思いますが、
現代の人間社会が抱える問題や、地方コミュニティの難しさを浮き彫りにしながら、
普遍的な「人間」の業を抉り、
そしてそういう弱い存在である人間という生きものを
あらためて愛おしく感じてしまう、
とても重たく、とても優しい物語でした。

4月に一度観て、その後、作品自体のことを思い出す機会はあまり無かったのですが、
おそらく自分が生きる日常の時間のなかで、
無意識に作品を追体験するような思考が繰り返されていたのでしょうか、
再上映があるという情報に触れ、
「あらためてこの作品を観たら、自分はどんな思考をするのだろう……」
そう思って、あっという間に予約を入れていました。

深川監督とは比べるべくもありませんが、
僕も、物語を書き、演出をする仕事をする立場にあるだけに、
自分と同じこんな衝動を感じてもらえる作品だけを残したい、
たとえ暗く重たい印象の作品であろうとも、
人や社会を優しく包むような作品を創りたい、と心から思います。
またそういう作品づくりに参加したいと思ってくれる
俳優やスタッフとの出会いを大切にしたい、とも。



主演女優の宮澤美保さんは、深川栄洋監督とはご夫婦で、
お二人のその関係の深さもまたこの作品づくりに大きな力を及ぼしているように感じました。

20年以上「劇団」というスタイルにこだわり、いくつも作品を創ってきた僕は、
この点にこそ、最も強い関心を覚えました。

座組を構成する人々の関係が作品に与える影響。

良い要素もあれば、落とし穴になりかねないネガ要素もあるはずですが、
この作品における深川監督と宮澤さんは、固い信頼関係のもと、
人間がパーソナルな瞬間にしか見せないぶざまな様子や感情を、
緻密に、そして大胆に描いていました。
作品とは思えない、人の家を覗いているようなリアル。

信頼に基づいた緊張感が生み出す
創作現場の空気がしっかりとベースになって、
人間のそうしたリアルがフィルムに焼き付いていました。

僕が創るようなファンタジーテイストの舞台作品は、
リアルとは縁遠い「夢物語」と誤解されがちなのですが、
観る人々が楽しめる作品にするためには、
ファンタジーであればこそ、むしろリアルは絶対に必須で、
僕はいつでもどこでもどこまでもリアルを追求し続けたい。

それが観客に対する誠意のように思います。


物語を創る立場の人間として、
とてもたくさんの気づきをもらえただけでなく、
一人間として、豊かな心の旅をさせてもらえた
『光復』という映画作品に、心から感謝。

『光復』の公式サイト→ https://kofuku-movie.com/


また衝動的にリピートしたくなる映画や演劇に出会いたいな。
恋する気持ちにちょっと似てるんですよね、たぶん。


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賢治さんたちに会いに~映画『銀河鉄道の父』を観る~ [日々雑録]

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Ora Orade Shitori egumo

今夜は久々にこの言葉を反芻しています。




作家・宮澤賢治が遺した物語を、映画や演劇にした作品はいっぱいあります。
賢治の人生を描いた作品もいっぱいあります。
でも賢治周辺の人々を真ん中に据えて描いた物語はあまりありません。
(あったかも知れないけれど、僕は出会いませんでした)。

若くして死に別れた賢治最愛の妹、トシさんを主人公にした作品を創りたい、
20年前、僕はなぜだかそんな想いでいっぱいになりました。
だって賢治が遺した物語は、彼のまわりの人々や
岩手の大自然がもとになって生まれてきたんだということが、
どの作品を読んでもイヤというほど分かるから。
そして『葡萄酒いろのミストラル』という舞台作品を書きました。


今回の映画『銀河鉄道の父』は、
賢治やトシのお父さん、政次郎(まさじろう)さんが主人公の物語。
つまり、『葡萄酒いろのミストラル』とちょっと似てるんです。

「宮澤家の空気を感じることで、賢治の作品世界を感じる。」

間接照明的なコンセプトがとても僕には合っています。



お父さんの政次郎が主人公ですから、
賢治は脇役として登場します。そして途中退場する妹のトシも。
トシの物語を書いた僕としては、やはり無意識に彼女に意識が行きます。

トシを演じた森七菜さん、最近ではドラマの現場で
いいように使われている気がして切なかったのですが、
久々に彼女の本領を拝んだ気がしました。
そして祖父喜助を演じた田中泯さんは文明溢れる今の時代を生きている現代人なのに、
いつも昔の人に見えるのはなぜなのだろう。
あのような異彩を放つには絶対に何か訳がある。
表現には、出そうと意図しなくても、その人の生き方が滲み出てくるもので、
むしろ出したくないものまで出てくるもの。
僕の場合は、演技をしてくれる俳優たちがオモテに出てくれるけど、
脚本や演出にも間違いなく滲み出るものがあるのでしょう。
表現を突き詰めてゆくと、それは操縦不能なのものかも知れません。


そんな素敵な俳優たちが演じた宮澤家の人々。
質屋という特異な環境であるにもかかわらず、
どの家庭にも通じる普遍性が描かれていて、序盤から心に沁み入るものがありました。

賢治は宮澤家のなかでは巨大台風みたいな存在で、
「台風」の妹トシは、ギラギラの太陽みたいな存在だったのかなあ。
僕が想像する賢治とトシの印象は昔からそんな感じです。
この映画を観た後、僕の頭は20年前に書いた作品に込めたトシへの想いでいっぱいになりました。


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すみません、ここから先は作品に込めた賢治やトシへの想いばかり書き連ねてしまいそうです。
「作品」というのは『銀河鉄道の父』じゃなくて『葡萄酒いろのミストラル』です。。
『銀河鉄道の父』の感想を探していた方、大変申し訳ありません( *´艸`)


舞台作品『葡萄酒いろのミストラル』は、
犬に生まれ変わったトシが、兄賢治に会いに行く冒険物語。
物語のオープニングシーンとラストシーンで二度、

「大丈夫、どこまでも走れるよ、私は一人じゃないもの」。

という台詞が出てきます。
実はこの台詞、トシがいよいよその命を終えようとした時に遺した、
「おら、おらで、ひとりでいくも。」という言葉から来ています。

賢治の弟・清六さんの著書では「トシは内気で穏やかな人だった」とあるように、
トシは品がよく嫋やかな女性像で描かれることが多いのですが、
けっしてそれだけの人ではないと僕は思っています。
その理由のひとつが、臨終のときのこの言葉。

「おら、おらで、ひとりでいくも。(私は私で一人でいきます)。」

あまりにも早く訪れた自分の死に対して毅然と向き合うトシの姿が浮かびます。
「私は一人じゃないもの」と「ひとりでいくも」は一見真逆の意味に思えますが、
家族に向けて「ひとりで行く」と言えたトシは、
「つまり自分は一人じゃない」という気持ちがあったからではないか、
そう思うわけです。飽くまで僕なりの解釈ですが。



そもそも「どうして宮澤トシが犬なの~?」と思う人もいるかも知れません。
実は犬なのにも理由があって、その突飛な設定は、

「今度生まれてくるとしても、こんなに自分の体のことだけで苦しまないように生まれてきます」

というトシの言葉から来ています。

つまりトシは「丈夫な体に生まれて、もっと人のしあわせのために尽くしたかった」と。
そうであるなら、純粋無垢な動物である犬こそトシのこの想いにぴったりなのではないかと。





そんな想いを込めて書いたのが『葡萄酒いろのミストラル』です。
何よりも、早くに離ればなれになってしまったトシと賢治が、
会いたいときにいつでも会いにいけますように、という願いを込めて、
僕は20年前にこの兄妹の物語を書いたんだっけ、ということをふと思い出したのでした。

映画そっちのけで、自分の作品大好き人間みたいな文章を書いてしまいました…(´Д`)
実際そうかも知れませんけど、それ以上に物語を通して、
岩手の大自然、そこから生まれた宮澤賢治の作品、
そこで生きた人たちの想いを伝えたい、という気持ちが今でも一番強いです。


賢治はとても魅力的で才能溢れる類い稀な人でしたが、
彼が遺した輝かしいいくつもの作品群は
彼とともに生きた人々と故郷の自然が創ったものだ、
とあらためて感じたほんとうに素晴らしい映画でした。
宮澤家を覗き穴から覗いているような、そんな気持ちになりました。
あと5回くらい観たかった~。


また大好きな花巻へ帰りたいな。
そして、いつか『葡萄酒いろのミストラル』を岩手で上演し、
賢治さんはじめゆかりの方々に捧げたいと、心からそう思います。

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岡村孝子クリニック受診 [日々雑録]

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今回も岡村孝子先生に治療していただきました(^○^)


「これは、あれだ、手術だな…」、

そう感じた昨年末の岡村孝子さんのコンサート。
今回もまた前回と近い感覚の“手術”の時間となりました。


少年時代から僕の人生を支え、むしろこの方によって人生が拓かれたともいえる
一生の恩人、岡村孝子さんのコンサートツアー「T’s Garden」初日に伺いました。
4年前に見つかった病気との闘いで一時は音楽活動もお休みし、
とても大切にされているコンサートを行えるようになったのは一昨年の9月。
年齢を重ねているにもかかわらず、大病を患う前よりもますます力強い歌声になり、
なんとも不思議なチカラを感じざるを得ません。
数々の歌に書かれている言葉にも表れていますが、
苦難をすべて力に変えてしまう人なのだと思います。


僕のほうはというと、相変わらずコロナウイルスとの闘いで
心が疲れてしまっている状態は続いているようで、
無自覚なままずっと心が張り詰めていることに、
岡村孝子さんが歌うこの場所に来ると気づかされます。

戴いた席がどセンターだったこともあり、
岡村孝子さんの言葉と音楽に正対するかのごとく全身の毛穴を解放し、
自分の細胞をかたちづくる音楽世界に身を委ねるのでした。




ソロ活動前の「あみん」時代も合わせると40年以上の活動となり、
コンサートでは新しい曲、懐かしい曲を色とりどりに散りばめ、
作曲のウラ話なども織り交ぜながら披露してくださるのですが、

「昔の楽曲を歌う時には、それを創った時代の自分が隣にいる感覚」

とお話をされていて。

いろんな時代の自分が、今の自分と一緒に生きている・・・
やっぱり岡村孝子さんは、
幾つになってもずっと少女のままで、
そしてずっと昔から大人だったんだと、
そのお話を聴いてあらためて感じたのでした。



僕もまた、脚本を書くときも、ふだんの生活においても、
大昔の少年時代の感情を自分の奧から引っ張り出し、蘇らせるというよりも、
いま生きている自分が、まるでその当時の自分であるかのように、
ものすごく新鮮な感情とともにかつて見た情景が浮かぶことが多くて。
これはきっと、僕自身が多感な時代を岡村孝子さんの音楽と過ごし、
この方の音楽や言葉を通して、いのちあるものが、生きること、死ぬこと、
不条理に感じる多くのことを思い続けてきたからなんじゃないかと、
そう思わずにはいられません。



岡村孝子さんが果たしてどうなのかは分かりませんが、
僕に関していえば、自分がそういう気質であることで、
とても生きづらさというかハンデを感じます。
様々な出来事に対処できてゆくキャパが増える一方で、
年齢を重ねてどんなにたくさん経験を積んだとしても、
少年のように心が傷つく、その頻度は変わりません。
むしろ増えている気さえします。

だからこそ物語を創るメンタルを持ち続けることができる訳ですが、
「心の肺活量」みたいなものがいつもオーバーヒートしている感じです。
岡村孝子さんもご自身の暮らしのなかで感じたことを
音楽作品に昇華させるスタイルのアーティストなので、
そのあたり、どうなのかなあと。
創作のそういうディープなお話をいつか伺える時が来たら嬉しいです。


昨年の公演『葡萄酒いろのミストラル』では、
岡村孝子さんの楽曲「ミストラル~季節風~」をメインテーマとして拝借しました。
この舞台作品は、孝子さんのこの曲があって初めて生まれた物語です。
同公演パンフレットでは、岡村孝子さんの音楽とシアターキューブリックの舞台作品の
関係性等について考察した記事も掲載しています。
最近、「緑川さんが創る舞台は岡村孝子さんの音楽がぴったりですね」という
大変ありがたいご感想をいただきました。
そのご感想をくださったご本人にもお伝えしましたが、そのコメントはちょっぴり野暮です(^○^)
だって僕の作品世界は岡村孝子さんの音楽があって、そこから生まれているものばかりですから!

『葡萄酒いろのミストラル』公演サイト
https://www.qublic.net/20mistral/




音楽シーンを含めたエンターテインメント業界も、
ようやく回復の軌道に乗りつつあり、
今回の会場も、ここ2、3年の厳戒態勢も薄らいで、
ステージと客席の心の距離もぐんと近づいた印象がありました。
かつてはOLの教祖と呼ばれた岡村孝子さんですけれど、
アーティストが教祖的立場から一方的に発信し、観客がそれを受け取るのではなく、
岡村孝子さんの現場のステージと客席は、
柏手の左手と右手のような、そういう関係なのだと思います。
ですから、想いを伝え合う濃い空間を取り戻せた喜びを、
そこにいた人たちの多くが感じていたように思いました。



病気を克服し、この場所に戻ってきてくれてありがとうございました。
今回も最後はやっぱり、それに尽きます。




岡村孝子さんの言葉と音楽の魅力の事、
その音楽から考えさせられた事などを綴った過去の記事です。
よろしければご覧ください。

2017/07/02 NO RAIN, NO RAINBOW
2017/10/16 光と笑顔あふれる庭で
2017/10/16 光を照らす人、岡村孝子さん。
2017/12/15 岡村孝子さんのクリスマス・ピクニック
2017/12/28 「気」が光る場所へ ~岡村孝子さんクリスマス・ピクニック大阪公演~
2018/06/18 泥中に咲く蓮のように
2018/09/12 世界中メリークリスマス
2018/12/05 カムパネルラのもと~岡村孝子さんクリスマスピクニック大阪公演~
2021/09/08 岡村孝子さん復活の祝祭。
2022/12/04 一輪挿しの水を入れ替える~岡村孝子さんのクリスマスピクニック~



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今月のお題「20周年記念終わりましたけど……」 [きゅ~め~るのお題]

おそらく2006年夏から毎月続いてきたお題ブログ、
メールマガジンの不定期化に伴い、無くなるのかと思いきや、まだあったんですね!
って、劇団の代表がびっくりしています(笑)


今月のテーマは「20周年記念終わりましたけど……」。
シアターキューブリックの20歳は3年前の2020年で、
この年は劇団結成20周年を記念する公演として春と秋に
『幸せな孤独な薔薇』『葡萄酒いろのミストラル』の2本を企画したのですが、
新型コロナウイルスによる公演延期が何度もあって、
おかげさまで、ようやく昨年二本目の公演を無事終え、
先月の二次元スクリーン劇場でこの二作品を上演し、
「20周年記念」と冠する催しをすべて行なうことができました。


気づけば今はもう2023年。
劇団のミーティングでは「25周年」の話題が持ちあがるようになってきました。
日本人って「何周年」っていうの好きですよね。なんなんでしょうね。

そういえば、このあいだ喫茶店で隣の若いカップルが、
「来月でウチら付き合い始めて1周年だよね。何かやろうよっ」みたいな話をしていて、
ショートケーキを顔面にアタックしてやろうかと思いました(笑)


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劇団の公演もイベントも、どれも文化祭みたいなもので、
その都度、最大限皆さんに楽しんでもらおうという気持ちと、
自分たちが楽しもう、という気持ちは絶えず持ち続けていて、
「〇周年」と銘打つことによって、それらの気持ちがさらに大きくなる、
なんてことも特にありません。
なのにどうして、そういう言葉を使って何かをしようとするのでしょう…。

そこらへんのことがよく分からないまま、
シアターキューブリック結成25周年記念の企画はこれからも進んでいきます。
あ、なんなら、今年も「結成23周年記念」をやればいいのかな(笑)

いったい、周年記念ってなんなのさ。



いつにも増してとりとめのない記事になってしまいました。


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今月のお題「○○がメルマガの新企画を担当したら」 [きゅ~め~るのお題]

おそらくは2006年から17年間続いてきた(えっ!!!!!)
シアターキューブリックメルマガ配信日恒例のお題ブログ、
メルマガの定期刊が終了するにあたり、今回が最終回となりました。
劇団の会議時に自分たちでお題を決めているのですが、
いざ書くとなると、すごく頭を抱えることが多かったこの企画。
メンバーたちの神経を相当削ってきたわりと、
よくまあ17年も続いてきたものだと思います。


最終回の今回のお題は「〇〇がメルマガの新企画を担当したら」。

今号で定期メルマガが終わるというのに、こんなお題です(笑)。
そしてお題ブログ伝統の「リレー形式」で最後を締めくくります。
ワタクシ緑川憲仁の担当は河野結です!





京都出身の河野結です。そして京都大好きの緑川。
それはもう京都ネタで行くしかありませんよ。
「演劇のチカラで街を遊園地に!」がテーマのシアターキューブリックですから、
河野結には京都の街を遊園地にしてもらいましょう!


これまでメルマガの企画として、
ダーツを使ってゲーム形式でホームグラウンドである墨田区を
劇団メンバーが紹介してきました。
その後継コーナーとして、碁盤の目の京都の街を「すごろく」に見立てて、
進んだり、退いたり、地元民として各所のオススメを紹介したり、
出されたお題にチャレンジしたり……。


道すがら出されるお題はもちろん難題だらけです!

サイコロが北野の「大将軍」交差点に止まったら、
家来に向かって威張り散らす大将軍の一人芝居をしなくてはなりませんし、
(「大将軍」の地名の由来とは全く違いますが(笑))
はたまた下鴨神社に止まったら、
下ネタかもしれないし、下ネタじゃないかもしれない、
ギリギリ下かも(しもかも)知れない即興ネタを披露しなければなりません。
(誰も見たい人はいないと思いますが…)


愛知県の岡崎も東海オンエアさんの活躍でふたたび注目を集めていますし、
ぜひ河野結の独創的すぎる世界観の表現で、
みんなが知ってるつもりになっている京都の魅力を
演劇らしさとともに広めてほしいものですね。


コーナータイトルは「盆地だヨ!全員集合!!」です。


そうだ、時々ゲストにも参加してもらいましょう。
京都だったら、東京よりも近い広島の伊藤十楽成と敷名めぐみ、よろしく!

劇団メンバーが全国に散っているのも、
こうやって考えてみるとおもしろいものです(^_-)-☆


というわけで、メルマガは今後不定期刊となりますが、
不定期刊ならではのおもしろさを追求してまいります。
「盆地だヨ!全員集合!!」が実現するかどうかは皆さんの後押し次第です!

シアターキューブリックのメルマガ「きゅ~め~る」、
そしてメルマガ配信日にお届けしてきたお題ブログ、
長年のご愛読ありがとうございました!!!!


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▲南禅寺にて。2016年ごろ。


さて他のメンバーの新コーナー案はどんなのかしら!?
劇団ホームぺージのトップから飛べます!
https://www.qublic.net/



★まもなく!3月18日開催!!★

シアターキューブリック 二次元スクリーン劇場
20周年記念ファイナル~気づけば23年経ちました~

https://qublic.net/2jigen23/

2023年3月18日(土)
会場:本所地域プラザBIGSHIP
東京都墨田区本所1-13-4

劇団結成20周年記念ファイナルイベント!
2021年上演の『幸せな孤独な薔薇』と2022年上演の『葡萄酒いろのミストラル』が
二次元スクリーン劇場として蘇ります!
出演者トークショーもありますよ!こちらは三次元!!!
緑川もこのトークショーに参加しまっす!!!


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今月のお題「20周年ファイナル」 [きゅ~め~るのお題]

毎月9日はシアターキューブリックのメールマガジンきゅ~め~るの配信日。
劇団メンバーが同じお題でブログを書く日でもあります。
今月のお題は「20周年ファイナル」。


2000年2月27日に結成したシアターキューブリックは、今月末で結成23周年を迎えます。
日頃から応援してくださる皆さまにあらためて感謝申し上げます。
というわけで今年で23周年なんですが、
実はいまだに「結成20周年なんちゃら」みたいなことをやっております(笑)
このダラダラ感がシアターキューブリックらしいといえば、らしいですね。


でも当初はそんなダラダラやるつもりはなかったんですよ。
結成20周年の2020年の春に『幸せな孤独な薔薇』を、
同年秋に『葡萄酒いろのミストラル』をバシッと決めて、
次へと進んでいこうと計画していました。



シアターキューブリック結成20周年記念公演第一弾
『幸せな孤独な薔薇』
作 田嶋ミラノ  演出 緑川憲仁
2020年4月9日(木)~4月15日(水)(公演中止) → 2021年5月20日(木)~26日(水)
浅草九劇

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まさか武漢やダイヤモンドプリンセス号のニュースが、
その後、世界中をこんな長く大変な状況に陥れるとは思ってもいませんでした。
4月の上演がどうなってしまうのか不安を抱えたまま稽古と公演準備を着々と進め、
ですが順調な稽古とは反比例して、世情はみるみる悪化していきました。
3月に公演を予定していた団体は、次々と公演中止を発表し、
どんなに厳重な予防対策を施そうとも、
もはや上演をすること自体が「悪」のような空気にさえなっていきました。
そして『幸せな孤独な薔薇』は本番初日8日前に公演中止を決めました。
そのことをメンバーに告げた日に行なった通し稽古のことは、今でも忘れられません。
悔しいとか、哀しいとか、やるせない、とかそういうことじゃなくて、
作品を積み上げてきた仲間たちと、
これまでとは違う次元でひとつになれた気がしたのです。
それなのに愛するお客さんの前に行くことは叶わない。


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▲公演中止を決めた2020年4月1日に行なった通し稽古でのカーテンコールのリハーサル。



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▲同日、通し稽古後の集合写真。



不思議な感じでしたね。
寸断された道のどんづまりで、最高の作品づくりに立ち会ってしまうということ。
そして、連続して秋に公演を控えていた『葡萄酒いろのミストラル』も
早々と上演を一年繰り下げる判断をしました。


翌2021年も新型コロナウイルスはまだまだ収束の気配を見せていませんでしたが、
感染の波の間隙を縫うように『幸せな孤独な薔薇』は奇跡的に上演をすることができました。
ただし、収容人数は規定の半分以下、舞台と客席最前列も大きく距離を置き、
かつ最前列の席の方にはフェイスシールド着用をお願いするという厳戒態勢。
今思うと、せっかくのお芝居を大変申し訳ない環境で観劇をしていただいていたなあと、
あらためて心が痛みます。
1年ぶりに再集合したメンバーは、同じ傷を負った同志になっていました。
一度は通し稽古まで出来上がっていた作品を、一年ぶりに組み立ててゆく稽古は、
いったいどれだけの時間を必要とするのか見当もつきませんでしたが、
蓋をあけてみると、恐ろしいほどのペースと濃さで立体化していきました。
心の底から「役者ってすげえ……」って毎日思っていました。
そして役者たちをそうさせてしまう作品を書いた田嶋ミラノさんの引力を感じていました。


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超個人的な感情としては、キャラメルボックスの(あの)西川浩幸さんと、
東京ハートブレイカーズの(あの)首藤健祐さんが同じ作品に出ていて、
その作品が僕の大大大好きな『幸せな孤独な薔薇』で、
僕がそれを演出しているという現実がとうとう最後まで不思議な気持ちでした。
冥途の土産とはこういうことを言うのだろうなと。










2021年秋に繰り下げていた『葡萄酒いろのミストラル』は、
その後感染症拡大のためにふたたび公演延期を余儀なくされました。
このころには「公演延期」という苦渋の決断さえも、少し慣れてきた自分がいました。
おそらく、そうでもしないと心が持たなかったのだと思います。





シアターキューブリック結成20周年記念公演第二弾
『葡萄酒いろのミストラル』
作・演出 緑川憲仁
♪メインテーマ 岡村孝子「ミストラル~季節風~」
2020年10月21日(水)~25日(日)(公演中止)
→ 2021年10月20日(水)~24日(日)(公演中止) 
→ 2022年5月27日(金)~6月1日(水)
恵比寿・エコー劇場

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『葡萄酒いろのミストラル』公演再延期を決めても、
僕らは「準備の時間をたくさんもらえたのだ」と思うようにして、
喜々として準備を進めていきました。
きっとこういう心が、おのずと作品にも表れると知っているからでしょう。
宣伝写真の撮影では、大自然のなかキャストの仲間たちとも会って、
作品のふるさと、岩手県の花巻にもあらためてご挨拶に行きました。


残念ながら2022年も新型コロナウイルスは元気でした。
でも今度は『葡萄酒いろのミストラル』の企画を止めることはしませんでした。
桜の咲く季節に稽古をスタート。
初めて集まる役者陣なのに、まったくそんな感じがありませんでした。


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稽古場以外でのメンバー同士の交流は一切諦め、
感染症対策に翻弄されつつではありましたが、
主役を務めた高橋茉琴以下、作品のもとに一致結束。
前回公演に続いて「役者ってすげえ……」と感じる稽古稽古。そして本番。
僕はどうしてこんなに俳優陣やスタッフに恵まれているんだろうと、
とてもありがたく、とても申し訳なく、思う日々でした。

すでにこの時、劇団結成から22年が経過していましたが、
結成20周年を記念するに相応しい二公演をお届けできた気持ちでいます。





そして来月、映像上映ではありますが、
この二つの作品をふたたび皆さんと一緒に楽しもう!という企画が決まりました。
「リビングで公演DVDを観るのでは、本来届けたい舞台の臨場感が届けられない」
という理由でシアターキューブリックではDVDを敢えて販売していません。
でも「過去の上演作品にまた出会いたい」という声に応えるかたちで考えたのが、
シアターキューブリックの二次元スクリーン劇場。
大スクリーン&大音響の空間で、舞台の臨場感とはまた一味違う迫力で、
みんな一緒に作品を楽しもう!という「二次元公演」。
舞台を作る過程でも「リズム」にこだわっているシアターキューブリック。
そのリズムが、粕谷晃司さんと松宏彰さんのディレクションを通し、
映像のリズムとなって表現されています。

演劇はやはりナマに限ります。
それはこの先も変わりません。

でも演劇の新しい楽しみ方は、あるんです!
舞台の真上に客席を置くことはできませんが、
二次元スクリーン劇場では、
劇場の客席からではけっして観られない角度からも作品を楽しめます。
ぜひ、演劇の新しい楽しみ方を体験しにいらしてください!




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シアターキューブリック 二次元スクリーン劇場
20周年記念ファイナル~気づけば23年経ちました~

特設サイト
https://qublic.net/2jigen23/

2023年3月18日(土)
会場:本所地域プラザBIGSHIP
東京都墨田区本所1-13-4

劇団結成20周年記念ファイナルイベント!
2021年上演の『幸せな孤独な薔薇』と2022年上演の『葡萄酒いろのミストラル』が二次元スクリーン劇場として蘇る!

※『二次元スクリーン劇場』とは!?
複数のカメラによる撮影に映像作品ならではの演出を加え、ライブとは異なる臨場感溢れる劇空間を体験できるイベントです。

<第一部> 13:00開演
『幸せな孤独な薔薇』
作:田嶋ミラノ 演出:緑川憲仁
トークショー+本編上映(あわせて約130分)

●トークショー出演者
眞実 坂本実紅 首藤健祐 緑川憲仁 千田剛士


<第二部> 17:00開演
『葡萄酒いろのミストラル』
作・演出:緑川憲仁
トークショー+本編上映(あわせて約150分)

●トークショー出演者
高橋茉琴 品川ともみ 野原のぼ 緑川憲仁 片山耀将


チケット(指定席)
一部・二部のみ 3,500円
通し券(前売のみ) 6,000円
当日券は +500円 
※受付開始は開演45分前、開場は30分前です。

チケット発売中!


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