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今月のお題「『幸せな孤独な薔薇』終演。」 [日々雑録]

こんなに心に負荷のかかるブログお題も久しぶりです……。
きっとまだ自分のなかで整理できていない出来事なのでしょう。


『幸せな孤独な薔薇』はおかげさまで無事に公演の幕をおろすことができました。
公演の企画を立ち上げてから、すでに約2年近くの時間が経っています。
その間、キャスト・スタッフ・関係者の奮闘はもちろんのこと、
多くの皆様から多くのご支援やご声援を賜りました。

そして緊急事態宣言下、50%の収容規制の公演となりましたが、
毎日多くの皆様に見届けていただくことができました。
この場をお借りして心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。


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劇団結成20周年公演の第一弾だった今作品。
なぜ、外部作家さんのこの作品がこうした場面で上演されたのかを今一度。

『幸せな孤独な薔薇』は、惑星ピスタチオの看板女優だった平和堂ミラノさんが、
劇団から離れ「田嶋ミラノ」となって、2000年に発表した作品。
ちょうどシアターキューブリック旗揚げと同年で、
集まったばかりの仲間たちとこのお芝居を観にいき、
終演後、僕は自分が劇場の空間に溶けてしまうんじゃないかってくらいに、
心がぐにゃぐにゃになってしまいました。

自分の中に深く深く刻まれたのでしょうね。

その後、僕は自分の脚本を何本も書いてゆくことになりましたが、
この時の感覚は無自覚的な次元で、
ずーっと自分の深いところに生き続けていたんだと思います。



2003年には、そのミラノさんが突然亡くなってしまいました。

このことは却って、ミラノさんと一緒に生きてゆくことができるようにさせてくれたのかも知れません。
その後は折々に、ミラノさんのこと、そしてこの物語を思い出しながら、
シアターキューブリックとしての歩みを重ねてきました。

この劇団は、たとえば「学生劇団から派生した、、」みたいな物理的なルーツを持ちません。
もしかすると最も近いルーツは田嶋ミラノさんであるかも分かりません。
そうした経緯で、結成20周年の集大成の公演として、この作品を選びました。



そんなふうに書くと、至って理詰めで上演作品が選ばれたのだなと感じるかも知れません。
ただ、そんな理由の一方で、僕個人が、いつかどこかのタイミングで、
この物語に登場する人々に、そしてミラノさんにもう一度会いたい……
そんな超個人的な感情があったということも、かなりの濃度で確かなことです。


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その作品を上演するにあたり、集まってくれた人たちが熱すぎました。

旗揚げの頃から約20年、一緒に頑張ってきた劇団メンバー・スタッフ陣に加え、
この劇団を我が家のように慕ってくれる客演陣が今回も集まってくれました。
初主演となった眞実ちゃんも、まだ今回が2回目の出演の坂本実紅ちゃんも、
僕はまるで自分の娘みたいな気持ちで日々期待し、見守り、
逞しくなった舞台上の彼女たちの姿に、何度も泣きそうになりました。
まだまだ若手だと思っていた7年ぶり鈴木研くんも、
知らないうちに磨いていたものすごいセンスで、この作品を締めてくれました。

今回その中には、演劇人生を歩むことになった若かりし頃の僕に
多大な影響を与えた劇団、演劇集団キャラメルボックスの看板・西川浩幸さんや、
21年前の『幸せな孤独な薔薇』に出演していた首藤健祐さんの姿もありました。
あの西川浩幸さんとあの首藤健祐さんが同じ舞台に立つということだけでもものすごいことなのに、
その作品を自分が演出するなんて、ちょっと本当にどうかなっちゃいそうでした。
そして、トドメは、演出の僕の名前のすぐ隣には「作 田嶋ミラノ」。

正直「こんなことが起きてしまっていいのだろうか?」というレベルの奇跡でした。

首藤健祐さんは10年前から時々「シアターキューブリック、恐るべし」という
謎のフレーズを仰るのですが、今回の公演はまさに「恐るべし」でしたよ、首藤さん。



僕も大勢いるスタッフの一人でありまして、
舞台公演というのは、お客さんと接する「オモテ」、接しない「ウラ」、
大勢のプロフェッショナルなスタッフさんがいて初めて成り立ちます。
この方たちの作品への想いもね……、今回は企画段階、稽古段階からビンビンでした。
そういった俳優陣を含む大勢のメンバーの「想いの掛け算」があって、
ようやく密度の濃い作品が出来上がるのだということを、あらためて強く感じました。
俳優陣、スタッフ陣の、ミラノさんの想いに迫ろうとする情熱はとにかく凄かった。
みんなほんとうにありがとうございました。




今回は時節柄、劇場まで行きたくても行けない方々に向けて、
初めてオンライン配信なるものに挑戦しました。

映像で作品を発信するからには、「劇場の臨場感と映像の醍醐味両方を届けたい!」
ということで、CMクリエイターとして活躍されている松宏彰さんと、
毎公演お世話になっている、かすや舞台記録さんのタッグで、
浅草九劇さんも唸るほどのハイクオリティの作品映像をナマ配信でお届けすることができました。
演出の僕自身、このクオリティには本当にびっくりしました。
なんでこんな凄いことがナマでできるのだろう!!!と。

こうしたハイクオリティの舞台配信が、ナマ観劇の最高のPRになればいいなと思います。
そして、皆さんが安心して街へ、そして劇場へ繰り出せる時期が戻ってきたら、
どこの劇場の客席もいっぱいになったらいいな、と。



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▲2020年4月1日、公演延期を決めた日、最後の通し稽古を行なった後の集合写真。



昨年春、公演が一年延期となってしまったことは、ただただ残念で、かつ、とても大変な出来事でしたが、
結果的には、この一年という時間はまったく無駄にならず、
逆に座組の結束力を高め、密度の濃い作品づくりへと向かうことができました。

願わくば収容規制のないなかで、満員のお客さんにお届けしたかった!
という気持ちは多分にありますが、
今、この時期にこの作品をお届けできた幸せのほうが何倍も勝っています。








実は、今回お客さんからいただいた多くのご感想で、びっくりしたことがあります。


「まるで舞台にミラノさんがいるようでした」
という言葉が、ほんとうにたくさん届きました。


21年前にミラノさんが演じた主人公・ルカを演じた眞実ちゃんは、
ミラノさんとは容姿がまったく異なります。
小柄のミラノさんとはむしろ真逆です。
それなのに、です。

ミラノさんが客席から僕らを見守ってくれていたとしたら、それはとても嬉しいですが、
8人のキャストたちと一緒に舞台でお芝居をしてくれていたとしたら、もっともっと幸せです。

そうだといいなあ。。







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▲この画像は、配信アーカイブのスクリーンショット。

ラストシーンで、ルカが最後の言葉を呟いたあと、照らされていた照明が消える瞬間です。
眞実ちゃんの顔だけど、同時にミラノさんにも見えるんです。何度見ても。



『幸せな孤独な薔薇』。これまでもとても大切な作品でしたが、この公演を経て、
僕にとって、劇団にとって、もっともっと大切な作品になりました。



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「想いのリレー」


今年の6月下旬、突然でした。
「悲しい」とさえ思えませんでした。
正直、半年経った今でも事実を受け止めきれないでいます。
それくらい、あなたは何も言わずにある日突然行ってしまいました。

ちょくちょくあなたのところへ行っては最近見たオススメの本や映画の話を聞いて、
あなたはそんなつもりは全くなかったでしょうけど、
僕はあなたからたくさんのエッセンスをもらいました。
今にして思えば、「年の離れた姉と弟」という感じだったのかも知れません。

今回の脚本も、いつにもまして自分自身との格闘の日々でした。
そんな時にいつも僕の心を落ち着かせてくれたのは、
ワープロの隣でずっと同じ顔で僕を見守り続けてくれた写真の中のあなたでした。
きっと今は僕の中のどこかでちょこんと座ってくれていると信じています。

あなたのいない初めてのクリスマス。
僕はいま、あなたから受け取った「優しい気持ち」というバトンをしっかりと握りしめています。


2003年12月上演 シアターキューブリック『サンタクロース・ドットコム!』パンフレット文章より


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ありがとう、令和2年。 [日々雑録]

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今日が大晦日であることがまだピンと来ていないのですが、
テレビでは紅白歌合戦をやっているのでやっぱり今年最後の日のようです。
「今年は一年が速(早)すぎる!」という声をたくさん耳にし、
僕も同じことを言いました。

なのに、2月以前の出来事がはるか昔のことのように感じられます。


これ、楽しみ尽くした旅が終わってゆく帰り道と同じ感覚です。
「あっという間だったけど、実際の時間以上長く、そして濃く過ごしたなあ」という。。

「進展」という意味で濃かったかと問われれば、まったくそんなことはなくて、
脚本・演出を務める劇団は2作品の公演が飛び(現在来年のリベンジに向けて準備中)、
代表を務める会社は、多額の借金を負い、売上は従来の水準にまったく戻っていません。
どちらの団体もエンターテインメント業界にあって、
ほかの会社やアーティストの皆さん同様、果てしない暗中模索の毎日が続いています。

では、コロナ前は暗中模索していなかったのか、と言えばそんなことはなく、
次元は違えど、これまでもずっといろんなことを模索してきたのです。
だから実は、根本のところは何も変わっていないんですよね。

「今の自分たちに何ができるか、何を求められているか、何がしたいか」。

それらの交差点を見つける営みは、これまでも、今年も、来年もきっと変わりません。



たしか、昨年の大みそかに書いたブログは、
「2020年に向けた準備に明け暮れた一年」と書きました。
それがシアターキューブリック結成20周年記念公演の2作品
『幸せな孤独な薔薇』と『葡萄酒いろのミストラル』であり、
Nextから新社名「株式会社ネビュラエンタープライズ」への衣替えでした。
公演はどちらも来年に延期となり、
新たな名前を冠した会社は大嵐のなかの船出となりました。

残念な気持ちが無いと言えば、負け惜しみのようにも思えますが、
今は不思議なほど「これでよかったんだ」という気持ちが大きいんです。
自分が予期していない大小の出来事が毎日起きるなかで、
「最善」と思うことを探して、決めて、行動して、
その結果の今日を生きていると思えるからです。
ダメージを受けた分、逞しくなったところもあると思います。
と思うと、2020年という一年は、
結果的に自分自身と向かい合えた一年だったんだなと思いました。

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▲2021年5月に上演延期となった『幸せな孤独な薔薇』。

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▲2020年9月2日、株式会社ネビュラエンタープライズへ社名を改めました。


来年も、自分を育んでくれた舞台芸術に少しでも恩返しができるよう、
その魅力を多くの皆さんと分かち合い、輪を広げていきたいと思います。

今年も一年ありがとうございました。
そして2021年もよろしくお願いします。
皆様、良いお年をお迎えください。


緑川憲仁

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始まりました!『幸せな孤独な薔薇』公演グッズ販売! [日々雑録]

今回の公演も劇場ロビーではさまざまな公演グッズが並ぶ予定でした。
が、公演そのものが延期になってしまい、
「関連グッズだけ売る」というのもちょっと間抜けにも思いましたが、
せっかく丹精込めて作りましたので、インターネットでグッズ販売始めます!
(実際のところはグッズを買っていただかないと、次の活動に進めないのですっっ!!)



名付けて「公演延期応援企画」!!!!!!

自分たちで「応援」とか付けてる時点で余裕の無さを感じます(笑)
でもでも、なかなか素敵なラインナップが揃っているのですよ。


「いつものシアターキューブリックとは一味雰囲気が違うね」と評判だった
絵本作家なかむらしんいちろうさんイラストのメインビジュアル。
このイラストがデザインされたクリアファイル、かなり素敵。
さらに、キャスト8名の集合写真付きのお得なセット販売もあります。
さらに、「保管用と使う用2枚欲しい!」という方のために2枚セットもご用意!

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▲キャスト集合写真はこれです。



キャストブロマイドは8名のキャストそれぞれ、3種類の写真を1セットに。
劇団20周年の特別限定ロゴと作品タイトルが刻まれ、
作品の世界観にぴったりな空間で撮影された珠玉の写真たち、かなり素敵。
それぞれお好きなキャストを選べるよう、俳優別の3枚セットになっています!


公演はしばらく先となりますが、
『幸せな孤独な薔薇』の香りがするグッズをお手元に置いて、
楽しみに公演をお待ちいただけたら幸せです。

公演グッズのラインナップおよび詳細は以下のページをご覧ください!
https://qublic-goods.stores.jp/


応援なにとぞよろしくお願いいたします!

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おじいちゃんのこと [日々雑録]

先月の18日、ぼくのおじいちゃんが亡くなりました。
「見えなくなった」というほうが正確でしょうか。

96歳だったぼくのおじいちゃんとは、
ぼくが埼玉の幼稚園・小学校に通った8年間以外はずっと一緒に暮らしました。
80代半ばまで楽団でギターを弾いていたアーティストなおじいちゃん。
つまらないダジャレがすきで、手の器用なおじいちゃん。
周囲を一瞬固まらせてしまう、ぼくの唐突な、しかも冗談と判じ難い冗談は、
きっとおじいちゃんから母親へ、そしてぼくへと受け継がれた遺伝子です。
それからうちには畳一畳分くらいの、ぼくが作った鉄道ジオラマがありますが、
これもきっとおじいちゃんから受け継がれたものです。
10歳の頃、家に突然、上越新幹線のNゲージが出現しました。
おじいちゃんがぼくを驚かせるために用意してくれたものでした。
自分がしてもらって嬉しかった思い出は、自然と再生してしまうのでしょうね。

ぼくは自他ともに認める「おじいちゃん子」で、
小さい頃は上野駅にやってくるいろんな電車を見たくて、
階段の多い上野駅でおじいちゃんを連れまわしていました。
(今にして思えば、大変過酷な孫の世話だったと思います。)
きっとその体験が自身の作品内にも出てきているのでしょうね。
(『葡萄酒いろのミストラル』という作品には上野駅の複雑な構内の描写が登場します)
こんなふうにぼくの中には、おじいちゃんからもらった要素がいっぱいあるので、
おじいちゃんが見えなくなってしまった今もいっしょに生きている気持ちです。
でも、夜遅く稽古から帰って家の玄関を開けると漂ってくるお線香の香り。
毎晩、家の扉を開けるのが現実と向き合う瞬間になっていました。



中学生以降はずっと一緒に暮らしていましたが、
埼玉に暮らしていた小学生の頃は、
毎週末東武線に乗って、おじいちゃんの家に遊びに来ていました。
土曜日に泊まって日曜に帰る、そんな週末です。
日曜の夜、埼玉の家に帰る東武電車から見る暗い景色を見ながら、

「おじいちゃんは高齢だから、このままもう会えないかもしれないな…」

ちょっと涙ぐみながら、そんなことを思う、気の早すぎる小学生でした(笑)
それから35年も一緒に過ごせたことを思うと、とても幸せです。

亡くなる日。
おじいちゃん子なのを、おじいちゃんも知ってくれていたのでしょうか、
ぼくが病院に着くころは、すでに意識がありませんでしたが、
部屋に着いたそのすぐ後に、静かに心臓が止まっていきました。
公演稽古の忙しいさなか、おじいちゃんの最期に立ち会えて本当によかった。
駅から病院に急ぐ道、夕暮れの光がとても美しかったのを覚えています。



おじいちゃんの姿は見えなくなってしまいましたが、
今は身軽にいろんなところへ出かけているのでしょう。
ちょっと羨ましいくらいです。
ここ数年は我慢していたお酒を飲んで、会いたい人と会って、
いろんなことをしてほしいなと思います。
あと、おばあちゃんが気落ちしないように、
今までみたいにこっそり支えてほしいな。

かつて『四百年の襷』というお芝居を書いたことのある僕ですが、
近い肉親を亡くしてみて初めて気づく、いのちの「襷」の存在がありますね。
ぼくは次の誰かに何を託せるとも思いませんが、
おじいちゃんからもらったいのちを楽しく生きていきたいと思います。


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斎場の桜。いつもより桜がすこし早く咲き始めた季節のことでした。


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人生いろいろなお正月 [日々雑録]

新年あけましておめでとうございます。
風に舞う雪に、来し方行く末を思うお正月です。

年末年始、皆さんが紡ぐたくさんの言葉を見ていると、
自分とはまったく異なる人生のバリエーションを感じますね。
人生いろいろ。



自分の人生の重さは、毎朝起きて当たり前に感じる体重みたいに、
当たり前の重みとして背負いながら四苦八苦していますが、
皆さんもまた、他人が新鮮に感じるそれぞれの人生のその重さを
日々当たり前のことに感じながら、格闘しているんだなと。



過ぎ去った時間だからこそ、
人は「もしも〇〇していたら」と思うのかもしれませんが、
僕がもしも違う人生を生きていたなら、
いったいどんな2020年の正月だっただろう…?とファンタジーなことを思ってみたり。。
一方、これからに目を向ければ、そこに「もしも〇〇していたら」はありません。
これから先の出来事はこれから自分が選ぶ大事小事の積み重ねの結果なので、
何もかも自分次第。

生きたい人生を生きるには、もっともっと自分の判断のセンスを磨くだけですね。
その判断のセンスを磨くには、周囲で支えてくれている人たちの思いと、時間を大切に。
そしてその蓄積を活かしきれる健康な体を持つことを大切に。




思えば、僕の仕事はそうしたいろいろな人生を疑似体験したい、
という欲求がベースにあるのかも知れません。
そして、劇場という異空間でたくさんの人にいろいろな人生を疑似体験してほしい、と。
「人間として豊かに生きるには…?」を悶々と考えざるを得ない僕の人生(笑)、
それを創作活動、企業活動に“遠慮せず”活かしていきたいと思います。


ということで2020年のテーマは「遠慮しない」に決定!
もしかすると、ちょっぴり図々しい印象に変わるかも知れませんが、
許せる範囲のかぎりでご容赦いただければうれしいです。
社長業も、脚本家も、演出家も、劇団代表も、
緑川憲仁の人生を精一杯楽しく生きてまいりたいと思います。


皆様、ことしもよろしくお願いいたします。

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ありがとう、平成31年&令和1年。 [日々雑録]

大つごもりの夜です。
思えば一つの時代が終わり、新しい時代が始まった年でしたね。
ですが、正直なところ、時代の終わりや始まりといったニュース的な出来事よりも、
なんてことないふつうの毎日を送れることが素敵なことなんだということを、
今までよりも強く感じた一年となりました。
仲間やお世話になった方々のなかには、とても大変な出来事に向き合う人もいました。
そうした人たちに、自分が出来ることなんてそもそも無いんですが、
それでも、何かしら力になれることはないだろうか…
と考える時間が多かったように思います。


今年は、劇団も会社も準備に勤しんだ一年でした。
どちらも「2020」とかオリンピックイヤーを意識したことではないのですが、
2000年に旗揚げしたシアターキューブリックは来年が結成20周年、
2年前に社長に就任した会社Nextも、いよいよ大きな変革に挑もうとしています。
どちらも、まだリリースできないことがたくさんあって、
具体的に何を指すのかまではお伝えできないのが歯がゆいかぎりですが、
「魂は細部に宿る」ことを信じ、そして再確認する作業の繰り返しだったように感じます。
来年はそれらプロジェクトの実行段階となり、相当慌ただしい一年になりそうですが、
細部に宿すことをくれぐれも見失わず、
不器用なこの生き方を貫いてまいりたいと思います。


今年も一年どうもありがとうございました。
皆様、良いお年をお迎えください。


緑川憲仁

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おめでとう、への感謝じゃなくて。 [日々雑録]

昨日、おかげさまで44回目の誕生日を迎えることができました。
自分の父親とは、父が40歳の時までしか一緒に過ごしておらず、
社会人になって入った会社は社長(キャラメルボックスのプロデューサー)も若く、
その会社から分社独立する時点で、その社長もやっぱり40歳くらいでした。
ですので、自分に身近な「44歳の男」のイメージは、
僕自身の感覚においてはあんまりありません。
自分で開拓するというか、試行錯誤を繰り返し、進むだけです。

周囲からはしょっちゅう「40代には見えない」と言われます。
それが若々しいのか、幼いのか、年齢を超越した何かなのか(笑)
何を意味するのかは果たして分かりませんが、
努力も怠惰も善も悪も、すべてを包含した
「これが今の緑川憲仁という生身の作品」ということだけは確実です。
年齢らしさ、って一体何でしょうかね。



生きていると年に一回やってくる誕生日がちょっと苦手です。
齢を重ねてきて、より強く思うようになっているのは、
お誕生日は、今日まで自分を支えてくれた周囲の方々へ感謝をする日だなあ、
という気持ち。
ですが、僕を支えてくれる皆さんは「おめでとう」と言ってくれます。
僕は「ありがとう」と言います。
すると、「おめでとう」というお祝いに対して
「ありがとう」とお返しをしているみたいになります。
もちろん、その気持ちもあります。もちろんです。

けれど、誕生日にお祝いをしてもらう立場だとは正直思っていないんです。
自分へのお祝いの言葉があってもなくても、
近くにいる人にも、遠くにいてなかなか会えない人にも、
「いつもありがとう、おかげでここまで生きてこられました」
そういう気持ちで「ありがとう」という気持ちを伝えたいと思っています。
だから、突然部屋が暗くなって「♬はっぴばーすでー、とぅーゆー」とか、
ケーキとか、プレゼントとか、嬉しいのですが、なーんにも要りません。
あんまりコレ言うと、偏屈に思われるのであまり言いませんが(←言ってるし)、
なんだかそんなことを思っています。



それなのに、昨日はなんとオオゼキタクさんの15周年ワンマンライブで
突然バンドの皆さんやその場にいらした大勢のお客さんから、
一観客の僕なんかへお祝いの歌を歌ってもらってしまいました。
自分の椅子がセリになっていたらいいのに!と思うくらいに
「ぴゃ~~~~」という気持ちでした。
オオゼキタクさんの音楽は、不思議といろんな景色や人々の顔が目くるめきます。
自分の誕生日にナマでそういう歌を聴かせてもらいながら、
今まで過ごしてきた年月を思い、いろんな景色や人を思い出していました。
オオゼキタクさん、デビュー15周年おめでとうございます。
これからもたくさんの車窓とコラボしましょうね!

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僕は旅が好きなので、年がら年中「旅に行きたい!」と思っていますが、
人生そのものが長い旅で、いまもその旅の途中なんですよね。
旅館に泊まって、おいしいものを食べて、美術館に行くだけが旅じゃない、
毎日、いろんな人に会ったり、部屋に閉じこもったり、
いいことを思いついたり、一日机に向かって一文字も脚本が進まなかったり、
そういう時間全部がきっと旅なんですよね。
今はちょっとカッコつけて、こんなふうに書いているかも知れませんが、
死ぬ間際には、間違いなくそのように思うと思います。



僕は特に(異常な晴れ男であること以外)超常的な能力は備えていませんが、
このところ「不思議な力」を感じる出来事がよくあります。
自分の目に見えないだけで、そこに何かの力がはたらいている、
と思える出来事。

「人に恵まれている」という言い方がありますが、
これも別の言い方をすれば「人からチカラを送っていただいている」ということ。
物理的な援助や声援だけではなくて、心のレベルの。
その思いをキャッチでき得る自分の器とはなにか。
旅ももう半分を過ぎていますし、残りの半分はこんなことを思いながら、
いろんな人たちと一緒におもしろい旅を続けていけたらいいなと思います。

いつも僕を支えてくださっている皆さん、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。

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即位礼の日の東京に生きる [日々雑録]

重たい議題の会合に向かう午後。
電車の人は、どことなく所在無さげな様子で、
お盆休みとは、また少し違う静けさの都心。
ふだん通りお仕事の人も多いみたいだけど、
休みの人も、ちょっぴり困惑気味の祝日だったかもしれませんね。

帰宅後、ニュースで見る大変貴重な皇室の伝統行事。
即位の礼は、ふだんこんな仕事をしていると、
不謹慎だけど大がかりなお芝居にも見えてきます。
リハーサルをしっかりやったんだろうなあ、とか
高御座の裏は舞台袖みたいにてんやわんやなんだろうなあ、とか(笑)


新しい時代が始まったんだなあという感慨と、
変わらずテレビ画面の隅を流れる被災地情報の重苦しさ。
どうやら、これからは気象災害が頻発する時代になるのでしょう。
気象で平穏が脅かされる世の中ならば、
せめて戦禍の脅威だけは避ける知恵を絞りたいものです。

期せずして本日の会合では芸術団体と政治の関係にも話が及んだのですが、
健全な民主主義を維持する風通しの塩梅が、どうも歪んできている気がします。 2F83C64B-7813-44CF-AE64-10B533CFBC26.jpeg

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神のお告げ [日々雑録]

10月19日の夜更けに、夢のなかで神のお告げ。

「ブログをまた始めなさい」。


寝付いたばかりなのに、眠れなくなった。

ちなみに長年続けてきたブログは、
ノートパソコンを替えた時にログインデータが分からなくなり、
窓口に問い合わせても、セキュリティが厳しすぎて教えてもらえず(笑)、
開店休業状態のまま実は一年近くが経っていて……。
これまで書いてきた記事の量もけっこうたくさんあるので、
既存のブログを捨てるには忍びなかったのですが、
こんな夢を見たからには、新規で立ち上げるか!と一念発起。
再びso-netで新しいブログを創ろうと思ったら、
なんと、今あるブログにログインできてしまったではないですかー!


というわけで、緑川のブログ復活です。
Twitterの文字数では語りきれなかったことや、
後々までしっかりと残したい気持ちを丁寧に綴っていきたいと思います。


そして、これは本当のことなのですが、
既に夢の中で新しいブログタイトルまで決められていたので、
装い新たに看板を掛け替えました。


その名も「犬なのかもしれない」。

どうぞよろしくお願いします。

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カムパネルラのもと~岡村孝子さんクリスマスピクニック大阪公演~ [日々雑録]

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『十二階のカムパネルラ』終演から1週間。
公演の余韻からここまで抜け出せないのは、なかなか無いことなのですが、
そんななか、メインテーマ曲として劇場空間を爽やかな空気で満たしてくださった
岡村孝子さんのコンサートツアー初日公演へ、お礼の気持ちを携えて行ってきました。

ふだんは、純粋に楽しい気持ちでウキウキ出かけるのですが、
今回ばかりは先週までの公演と地続きな印象を勝手に抱いていて、
この1年の苦しみや、俳優陣、スタッフ、お客さんみんなのいろんな顔が、
浮かんでは消え、消えては浮かぶ、大阪までの道中でした。
それくらいに『十二階のカムパネルラ』は岡村孝子さん無しでは語れない作品でした。


僕はもう20年近く劇作家の仕事をしていますが、
胸を張って「自分は劇作家です」と思えたことなんて実は一瞬もなくて、
「今書いている脚本は絶対に完成しないだろう」という恐怖に怯えていますし、
その脚本が無事に完成したら完成したで、今度は、
「もうこれ以上新しいお話を書くことはできない」といつも思っています。
そんな僕のいつも近くにいて、ものづくりの心を静かに煽ってくれるのが、
岡村孝子さんの言葉であり、旋律でした。

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作品のメインテーマ曲としてお借りすることになった初夏から今日まで、
『世界中メリークリスマス』をいったいどれだけ聴いたことでしょう。
もともと、僕にとってこの曲は「自動涙腺崩壊装置」たる存在だったわけですが、
まさかまさか、自身の作品を彩る曲に、、、と言いますか、
自身の作品を、無事この世に引っ張り出してくれた曲になろうとは、
一年前、同じ大阪の劇場で手拍子している時には露ほども思っていませんでした。

お芝居を観て下さった皆さんは、この曲とともに爽やかに昇天してゆく物語に、
いろいろな「救い」を感じてくださり、とても喜んでくださいました。
俳優陣も、この曲で暗転する瞬間に、共演者やお客さんとひとつに溶け合ってゆく、
そんな感触を持ってくれたかも知れません。
ですが、やっぱり一番の幸せを感じていたのは、きっと僕だろうと思っています。
今年の冬に生きている自分の姿をまったく想像できないほど、創作活動に苦しんでいた時期、
ふわっと救いの手を差しのべてくれた言葉と旋律は、
僕の人生を30年近くにわたり伴走し、この場所へ導いてくれた、この方の音楽でした。
そして、どうにかこうにか書き上げた脚本を、死力を尽くして演じてくれた俳優陣と、
その彼らの姿を見て感動してくれた多くのお客さん。
その人たちみんなの姿を間近で見ることができた僕は、
やっぱり誰よりも一番の幸せ者なんだと思っています。



僕にとって、そんな「宝物」のような存在にまでなってしまったこの曲。
この日は涙腺を崩壊させることもなく、包み込むようなこの方の音楽世界の海と、
『十二階のカムパネルラ』の光の世界を同時に堪能していました。

これまでの自分と確実に変わっているのは、


「たったひとつだけ願い叶う。サンタクロースがやってくる。」

というサビのフレーズを、
単なる美辞麗句としてではなく、
ほんとうにそうなんだ、と信じて聴けていることです。


これからも、今までよりもっともっと心の深いところで、
この方のメッセージをキャッチしていきたいと思いました。


といったようなことが心の中でぐるぐるしていたら、
公演パンフレットや大入り袋をお渡しするのを忘れてしまいました!(>_<)

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事務所の社長 金子邦雄さん、岡村孝子さん、素敵なお花をありがとうございました!

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