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TBS情報番組「グッとラック!」取材で語ったこと [劇作家の時間]

立川志らくさん司会のTBS情報番組「グッとラック!」に
コロナウイルスの影響を大きく受けたエンタメ業界のはしくれとしてインタビュー出演しました。


表現者としての、本当のほんとうの気持ちは、
作品を創作する過程の金銭的なことを含めた苦労話など、
世界に向かって一言も語りたくはありません。
それがエンタメを仕事にする人間としての誇りのようなものでもあります。
俳優たちの多くが演劇とは別の仕事を兼ねていることも、
もはや一般的に浸透しているかも知れませんが、
殊更そのことを活動のなかで発信することも快く思いません。
ひとつの公演を創るのに、どれくらいのお金が動いているとか、
本当にお話ししたくないです。
例えるなら、アイドルがすっぴんの自宅の暮らしを丸出しにするようなものです。
僕たちはお客さんに生きる力や夢を感じてもらって、
みんなが優しい気持ちで楽しく生きていくための存在だと思うからです。

ですが、今回のインタビューでは、放送されていない部分も含めると、
本当はお話ししたくないことばかりを淡々とお話させていただきました。
ただただ心を無にして淡々と話をするしかなかったようにも思います。



ありがたいことに、すでにいくつかの政策が進んでおり、
芸術団体を救済する内容も多少はあります。
ですが、現場の実感としてはまったくと言っても言い過ぎではないくらい、
「救済」になっていない(ならないだろう)というのが正直なところです。
大企業とは違いますから、この業界、内部留保などというものはほぼありません。
つまり直近の公演制作で発生した出費は、
その公演でのチケット収入、グッズ収入、スポンサー収入等で賄うという流れです。
その収入機会が絶たれ、出費だけが残った、
という状態が、業界内大小団体に共通して当てはまることだと思います。
自分たちのギャランティなんて、そもそも二の次です。
それ以外の出費だけでも、僕らくらいの規模の公演でさえ膨大なのです。
その負債があるかぎり、各団体は次の活動ができません。
次の活動自体、いつ再開できるのかもまったく見えていません。
再開までただただ耐え忍ぶ間にも、維持費の大きい芸術団体は倒産し、
小規模な団体で活動する人々は自ら廃業せざるを得ない、
そうした流れが加速するのが目に浮かびます。

「そんな実演団体が全部潰れたって、テレビがあれば娯楽は十分」
と思う人もいるかも知れません。
けれども、実はテレビなどの第一線で活躍している方の多くが、
劇団やバンド、アマチュアのソロ活動を経て活躍されているのです。
テレビがあれば十分という理屈は、瞬間を切り取っただけに過ぎません。
つまり、当たり前のように芸術に囲まれている環境がいつか途絶えるということです。

番組内で鴻上先輩がスティーブン・キングさんの言葉を紹介していました。


「外出自粛を強いられ自宅で過ごす日々、皆は音楽・映画・本に触れずに過ごせるのか」




いま、どの業界からも「補償が絶対に必要だ」という声が日に日に大きくなっています。
補償の話題になると、文化芸術界隈に向けられる声として、「お金がないのはどの業界も同じ、
非常事態の今はエンターテインメントなんて言っていられない、いっそ別の仕事をすればいい」
といったご意見が少なからずあるようです。
ですが、こんな危機になる以前から、
日常的にアルバイトをしながら創作活動、表現活動をしている人はいっぱいいます。
そもそも根源的にお金儲けをしたいのであれば、こんな仕事はやってません。
僕らは自身の生活を守ってほしいが為に支援を要請しているのではなくて、
将来の文化を維持・発展させる流れを守るために要請しているのです。
それには現在のアーティストの活動を守ることが絶対に必要不可欠です。



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▲「収入はゼロ」の男がこちら(笑)
それでも左後方からしっかり岡村孝子さんが見守ってくれています。




今一度。いま人々が自宅で自分の心を励ますことに苦心する日々のなかで、
テレビのバラエティ、音楽、映画、演劇、お笑い、落語、小説、絵画等、
こうしたものに触れたいと思わない人っていますか?
これまでのそれぞれの人生のなかで、
こうしたものから力をもらった覚えのない人っていますか?



僕は思います。衣食住、医療、交通などの生活インフラと同じくらい、
文化芸術は、人間の暮らしにとって必要不可欠なものだと強く思っています。



ですから、どうにかこの危機を乗り越え、
これまで積み重ねてきた活動を途絶えさせることなく、
活動を継続していけるよう頑張ってまいりたいと思います。
(けっきょく今は精神論で終わってしまうのが悔しいところです)

といったようなことも、インタビューではお話させていただきました。



番組制作のTBSの皆さんには大変お世話になりました。
この場をお借りしてお礼を申し上げます。

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