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NO RAIN, NO RAINBOW [日々雑録]

「NO RAIN, NO RAINBOW」
ハワイの諺だそうです。
「雨が降らなければ、虹が出ることもない」。

40歳を過ぎた自分は、この先生きる可能性がある時間よりも、
後ろを振り返った時にペタペタと残る迷いの跡のほうが多くなってきました。
健康な体に生んでもらって、大事に育ててもらって、
自分が選んだ仕事をここまで続けてこられて、
やりがいも楽しいこともいっぱいあったけれど、
けっして平坦なだけではなかったこれまでの毎日でした。


劇作家を志し、劇団を立てたのはもう17年も昔のことで、
以降、紆余曲折はいっぱいありながらも、
自分の気持ちとしてはまっすぐにここまで歩いてきました。
ですが、昨年、思いがけず、劇団とは別でもうひとつ
長年関わってきた舞台業界の会社の経営を預かることになり、
きのう7月1日をもって代表取締役社長に就任しました。

「社長になる」ということは、
世間一般では栄転だったり、出世だったりする出来事なのだと思いますが、
個人の気持ちとしてはそうした晴れやかなものは一切なく、
ぬかるんだ足元が、さらにぐいぐいと深く潜ってゆく、そんな重たい感覚です。
ですが、未来なんて誰にとってもはっきりとは見えないもので、
だからこそ楽しく、だからこそ不安なものなわけで、
「置かれた場所で咲きなさい」という気持ちで、やれることをやるだけ、
というシンプルな発想に今は帰結しているところです。


そんな折、昨日は岡村孝子さんのコンサートに久々に行ってきました。

このブログでも何度も触れていますが、岡村孝子さんの音楽は、
10代前半から常に僕の座右にあった音楽です。
10代前半と言えば、僕が作品づくりを始めるずっと前ですから、
僕の物書きとしての細胞は、この人の音楽と言葉でできていると言っても
まったく過剰な表現ではありません。
2002年発表の『葡萄酒いろのミストラル』の2012年再演の際には、
公式テーマ曲として「ミストラル」という楽曲をお借りしました。

悲しさ、切なさ、いとおしさ、優しさ……、

僕が日々感じるたくさんの感情には、
岡村孝子さんの音楽や言葉が常に「伴奏」しているのだと思います。
そして、そうした日々のなかから、
シアターキューブリックで発表してきた多くの作品が生まれました。
ファンタジー作品も、時代劇も、ローカル鉄道を舞台にした演劇も。


「だいすきな音楽」というよりも、あまりにも自分自身と同化しているため、
それに触れる機会の多さ、少なさにはとても鈍感になってしまい、
忙しい毎日のなかで、知らず知らずのうちに
自分のルーツとも言える「栄養」が欠乏していたのかも知れません。



それにしてもすごい時間でした。
(気の利いた表現がまったく思いつきません)


自分の「魂」をここまで自覚できる機会は、そう滅多にありません。
自分は肉体だけじゃなく、頭だけじゃなく、魂があったんだ!という感覚。
この先、自分が生きていきたい方向をはっきりと感じられた時、
自分の後ろに転がっている累々たる迷いの跡は、
まったく無駄なものではなくて、
きっと虹が出る前に必ず降る雨のようなものであったんだ、と。


2時間40分の上演時間のあいだで、
僕は今見せられているものと、
自分のこれまでと、
生きていきたいこれからが、
混ざりに混ざって、見事なごった煮になりました。

肉体と頭は、年齢とともに変わっていきます。
けれども魂だけは、年齢とは一切関係のない、
永久に光が注ぐ広大な草原なんだと思います。
新しいスタートとなった日に、こんな経験ができたこと、
僕はとても偶然とは思えません。


頂いたからには、今度は周りに返していく番です。


劇団では代表理事で、会社では代表取締役社長で、
そんなたいそうな立場を預かったからといって、
自分に何ができるとは元々思っていませんが、
こういう思想、こういう生き方をさせてもらってきた一人の人間として、
はつらつと前に進んでいきたいと思います。


組織の要職に就く際の文章としては、
なんとも個人の精神に偏りすぎな内容ですが何卒ご容赦ください。

あらためて、よろしくお願いいたします。

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