SSブログ

今月のお題「『幸せな孤独な薔薇』終演。」 [日々雑録]

こんなに心に負荷のかかるブログお題も久しぶりです……。
きっとまだ自分のなかで整理できていない出来事なのでしょう。


『幸せな孤独な薔薇』はおかげさまで無事に公演の幕をおろすことができました。
公演の企画を立ち上げてから、すでに約2年近くの時間が経っています。
その間、キャスト・スタッフ・関係者の奮闘はもちろんのこと、
多くの皆様から多くのご支援やご声援を賜りました。

そして緊急事態宣言下、50%の収容規制の公演となりましたが、
毎日多くの皆様に見届けていただくことができました。
この場をお借りして心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。


IMG_0748.JPG


劇団結成20周年公演の第一弾だった今作品。
なぜ、外部作家さんのこの作品がこうした場面で上演されたのかを今一度。

『幸せな孤独な薔薇』は、惑星ピスタチオの看板女優だった平和堂ミラノさんが、
劇団から離れ「田嶋ミラノ」となって、2000年に発表した作品。
ちょうどシアターキューブリック旗揚げと同年で、
集まったばかりの仲間たちとこのお芝居を観にいき、
終演後、僕は自分が劇場の空間に溶けてしまうんじゃないかってくらいに、
心がぐにゃぐにゃになってしまいました。

自分の中に深く深く刻まれたのでしょうね。

その後、僕は自分の脚本を何本も書いてゆくことになりましたが、
この時の感覚は無自覚的な次元で、
ずーっと自分の深いところに生き続けていたんだと思います。



2003年には、そのミラノさんが突然亡くなってしまいました。

このことは却って、ミラノさんと一緒に生きてゆくことができるようにさせてくれたのかも知れません。
その後は折々に、ミラノさんのこと、そしてこの物語を思い出しながら、
シアターキューブリックとしての歩みを重ねてきました。

この劇団は、たとえば「学生劇団から派生した、、」みたいな物理的なルーツを持ちません。
もしかすると最も近いルーツは田嶋ミラノさんであるかも分かりません。
そうした経緯で、結成20周年の集大成の公演として、この作品を選びました。



そんなふうに書くと、至って理詰めで上演作品が選ばれたのだなと感じるかも知れません。
ただ、そんな理由の一方で、僕個人が、いつかどこかのタイミングで、
この物語に登場する人々に、そしてミラノさんにもう一度会いたい……
そんな超個人的な感情があったということも、かなりの濃度で確かなことです。


IMG_4978 (1).JPG


その作品を上演するにあたり、集まってくれた人たちが熱すぎました。

旗揚げの頃から約20年、一緒に頑張ってきた劇団メンバー・スタッフ陣に加え、
この劇団を我が家のように慕ってくれる客演陣が今回も集まってくれました。
初主演となった眞実ちゃんも、まだ今回が2回目の出演の坂本実紅ちゃんも、
僕はまるで自分の娘みたいな気持ちで日々期待し、見守り、
逞しくなった舞台上の彼女たちの姿に、何度も泣きそうになりました。
まだまだ若手だと思っていた7年ぶり鈴木研くんも、
知らないうちに磨いていたものすごいセンスで、この作品を締めてくれました。

今回その中には、演劇人生を歩むことになった若かりし頃の僕に
多大な影響を与えた劇団、演劇集団キャラメルボックスの看板・西川浩幸さんや、
21年前の『幸せな孤独な薔薇』に出演していた首藤健祐さんの姿もありました。
あの西川浩幸さんとあの首藤健祐さんが同じ舞台に立つということだけでもものすごいことなのに、
その作品を自分が演出するなんて、ちょっと本当にどうかなっちゃいそうでした。
そして、トドメは、演出の僕の名前のすぐ隣には「作 田嶋ミラノ」。

正直「こんなことが起きてしまっていいのだろうか?」というレベルの奇跡でした。

首藤健祐さんは10年前から時々「シアターキューブリック、恐るべし」という
謎のフレーズを仰るのですが、今回の公演はまさに「恐るべし」でしたよ、首藤さん。



僕も大勢いるスタッフの一人でありまして、
舞台公演というのは、お客さんと接する「オモテ」、接しない「ウラ」、
大勢のプロフェッショナルなスタッフさんがいて初めて成り立ちます。
この方たちの作品への想いもね……、今回は企画段階、稽古段階からビンビンでした。
そういった俳優陣を含む大勢のメンバーの「想いの掛け算」があって、
ようやく密度の濃い作品が出来上がるのだということを、あらためて強く感じました。
俳優陣、スタッフ陣の、ミラノさんの想いに迫ろうとする情熱はとにかく凄かった。
みんなほんとうにありがとうございました。




今回は時節柄、劇場まで行きたくても行けない方々に向けて、
初めてオンライン配信なるものに挑戦しました。

映像で作品を発信するからには、「劇場の臨場感と映像の醍醐味両方を届けたい!」
ということで、CMクリエイターとして活躍されている松宏彰さんと、
毎公演お世話になっている、かすや舞台記録さんのタッグで、
浅草九劇さんも唸るほどのハイクオリティの作品映像をナマ配信でお届けすることができました。
演出の僕自身、このクオリティには本当にびっくりしました。
なんでこんな凄いことがナマでできるのだろう!!!と。

こうしたハイクオリティの舞台配信が、ナマ観劇の最高のPRになればいいなと思います。
そして、皆さんが安心して街へ、そして劇場へ繰り出せる時期が戻ってきたら、
どこの劇場の客席もいっぱいになったらいいな、と。



FullSizeR (1)040101.jpg
▲2020年4月1日、公演延期を決めた日、最後の通し稽古を行なった後の集合写真。



昨年春、公演が一年延期となってしまったことは、ただただ残念で、かつ、とても大変な出来事でしたが、
結果的には、この一年という時間はまったく無駄にならず、
逆に座組の結束力を高め、密度の濃い作品づくりへと向かうことができました。

願わくば収容規制のないなかで、満員のお客さんにお届けしたかった!
という気持ちは多分にありますが、
今、この時期にこの作品をお届けできた幸せのほうが何倍も勝っています。








実は、今回お客さんからいただいた多くのご感想で、びっくりしたことがあります。


「まるで舞台にミラノさんがいるようでした」
という言葉が、ほんとうにたくさん届きました。


21年前にミラノさんが演じた主人公・ルカを演じた眞実ちゃんは、
ミラノさんとは容姿がまったく異なります。
小柄のミラノさんとはむしろ真逆です。
それなのに、です。

ミラノさんが客席から僕らを見守ってくれていたとしたら、それはとても嬉しいですが、
8人のキャストたちと一緒に舞台でお芝居をしてくれていたとしたら、もっともっと幸せです。

そうだといいなあ。。







FullSizeR (13).jpg
▲この画像は、配信アーカイブのスクリーンショット。

ラストシーンで、ルカが最後の言葉を呟いたあと、照らされていた照明が消える瞬間です。
眞実ちゃんの顔だけど、同時にミラノさんにも見えるんです。何度見ても。



『幸せな孤独な薔薇』。これまでもとても大切な作品でしたが、この公演を経て、
僕にとって、劇団にとって、もっともっと大切な作品になりました。



IMG_0804.JPG



「想いのリレー」


今年の6月下旬、突然でした。
「悲しい」とさえ思えませんでした。
正直、半年経った今でも事実を受け止めきれないでいます。
それくらい、あなたは何も言わずにある日突然行ってしまいました。

ちょくちょくあなたのところへ行っては最近見たオススメの本や映画の話を聞いて、
あなたはそんなつもりは全くなかったでしょうけど、
僕はあなたからたくさんのエッセンスをもらいました。
今にして思えば、「年の離れた姉と弟」という感じだったのかも知れません。

今回の脚本も、いつにもまして自分自身との格闘の日々でした。
そんな時にいつも僕の心を落ち着かせてくれたのは、
ワープロの隣でずっと同じ顔で僕を見守り続けてくれた写真の中のあなたでした。
きっと今は僕の中のどこかでちょこんと座ってくれていると信じています。

あなたのいない初めてのクリスマス。
僕はいま、あなたから受け取った「優しい気持ち」というバトンをしっかりと握りしめています。


2003年12月上演 シアターキューブリック『サンタクロース・ドットコム!』パンフレット文章より


nice!(0) 
共通テーマ:演劇

クラウドファンディング [社長の時間]

ネビュラエンタープライズでは、本日より、クラウドファンディングを通じて、
当社の事業に関する支援の募集を始めました。
その事業とは無料のチラシ宅配サービス「おちらしさん」です。


劇場や美術館に行くと手に入れることができる先々の舞台公演や美術展のチラシ。
ですが、この一年、そうした場所へ行きたくても行けない期間が続き、
舞台公演や美術展などの文化芸術を楽しめなくなっただけでなく、
先々の情報を入手できる機会も激減してしまっています。
そうした現状を打破するために、ネビュラエンタープライズでは、
昨年夏、無料で、しかも自宅にいながらにして
舞台公演や美術展のチラシを手にすることが可能になる、
チラシ宅配サービス「おちらしさん」をスタートしました。



このサービス、大変ご好評をいただき、
現時点で舞台公演4,500名、美術2,500名の会員さまの登録をいただいています。

チラシをご希望のお客様が増えていることは大変喜ばしいことなのですが、
それは、取りも直さず経費増加を意味するものでもあります。
しかも、会場で配布するのとは異なり、宅配サービスということもあって、
サービス利用価格が割高にならざるを得ず、
実質的に、宣伝を希望する各ご利用団体さまと弊社とが
相応の割合で費用を負担している状況となっています。

ご存知の通り、ライブエンターテインメントは、
この一年余、業界全体で大打撃を受け、
例に漏れず、弊社も相次ぐ融資で首を繋いでいる状態が続いています。
お世話になり続けたエンタメ業界復興のためにここで一肌脱げればよかったのですが、
いよいよ限界が近づいてまいりました。

そこで、当サービスをご利用になる団体さまにとって、より使いやすい状態を作り、
多くの作品とお客さんを繋ぐ役割をよりいっそう果たしてまいりたい、
という想いのもと、クラウドファンディングを活用して、
広くご支援を募集することに致しました。

クラウドファンディングの詳細はこちらをご覧ください。
https://camp-fire.jp/projects/415891/preview?token=1prbzj0u


IMG_3076.JPG


「企業は社会の公器」という
松下幸之助さんの言葉があらためて心に深く入ってきます。
この言葉、今までは
「儲けだけを考えるのではなく、社会発展のための活動を志すのが企業の役目」
という解釈で捉えていました。もちろんそうなのだと思いますが、
「社会の公器たる企業活動を維持するために、
時には“有志”の皆さんからの援けを求めることもまた企業のあるべき姿」
なのかも知れないと思い至りました。


多くの皆さんからのご支援によってサービスを発展させ、
危機を乗り越えた後も、多くの皆さんのもとへ
作者のぬくもりが込められた色とりどりの文化芸術を届けられる企業として、
成長してまいりたいと思っています。

皆様からのご支援をお待ちしています。


株式会社ネビュラエンタープライズ
代表取締役 緑川憲仁


FullSizeR (5).jpg


nice!(0) 
共通テーマ:演劇