今月のお題「『幸せな孤独な薔薇』終演。」 [日々雑録]
こんなに心に負荷のかかるブログお題も久しぶりです……。
きっとまだ自分のなかで整理できていない出来事なのでしょう。
『幸せな孤独な薔薇』はおかげさまで無事に公演の幕をおろすことができました。
公演の企画を立ち上げてから、すでに約2年近くの時間が経っています。
その間、キャスト・スタッフ・関係者の奮闘はもちろんのこと、
多くの皆様から多くのご支援やご声援を賜りました。
そして緊急事態宣言下、50%の収容規制の公演となりましたが、
毎日多くの皆様に見届けていただくことができました。
この場をお借りして心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
劇団結成20周年公演の第一弾だった今作品。
なぜ、外部作家さんのこの作品がこうした場面で上演されたのかを今一度。
『幸せな孤独な薔薇』は、惑星ピスタチオの看板女優だった平和堂ミラノさんが、
劇団から離れ「田嶋ミラノ」となって、2000年に発表した作品。
ちょうどシアターキューブリック旗揚げと同年で、
集まったばかりの仲間たちとこのお芝居を観にいき、
終演後、僕は自分が劇場の空間に溶けてしまうんじゃないかってくらいに、
心がぐにゃぐにゃになってしまいました。
自分の中に深く深く刻まれたのでしょうね。
その後、僕は自分の脚本を何本も書いてゆくことになりましたが、
この時の感覚は無自覚的な次元で、
ずーっと自分の深いところに生き続けていたんだと思います。
2003年には、そのミラノさんが突然亡くなってしまいました。
このことは却って、ミラノさんと一緒に生きてゆくことができるようにさせてくれたのかも知れません。
その後は折々に、ミラノさんのこと、そしてこの物語を思い出しながら、
シアターキューブリックとしての歩みを重ねてきました。
この劇団は、たとえば「学生劇団から派生した、、」みたいな物理的なルーツを持ちません。
もしかすると最も近いルーツは田嶋ミラノさんであるかも分かりません。
そうした経緯で、結成20周年の集大成の公演として、この作品を選びました。
そんなふうに書くと、至って理詰めで上演作品が選ばれたのだなと感じるかも知れません。
ただ、そんな理由の一方で、僕個人が、いつかどこかのタイミングで、
この物語に登場する人々に、そしてミラノさんにもう一度会いたい……
そんな超個人的な感情があったということも、かなりの濃度で確かなことです。
その作品を上演するにあたり、集まってくれた人たちが熱すぎました。
旗揚げの頃から約20年、一緒に頑張ってきた劇団メンバー・スタッフ陣に加え、
この劇団を我が家のように慕ってくれる客演陣が今回も集まってくれました。
初主演となった眞実ちゃんも、まだ今回が2回目の出演の坂本実紅ちゃんも、
僕はまるで自分の娘みたいな気持ちで日々期待し、見守り、
逞しくなった舞台上の彼女たちの姿に、何度も泣きそうになりました。
まだまだ若手だと思っていた7年ぶり鈴木研くんも、
知らないうちに磨いていたものすごいセンスで、この作品を締めてくれました。
今回その中には、演劇人生を歩むことになった若かりし頃の僕に
多大な影響を与えた劇団、演劇集団キャラメルボックスの看板・西川浩幸さんや、
21年前の『幸せな孤独な薔薇』に出演していた首藤健祐さんの姿もありました。
あの西川浩幸さんとあの首藤健祐さんが同じ舞台に立つということだけでもものすごいことなのに、
その作品を自分が演出するなんて、ちょっと本当にどうかなっちゃいそうでした。
そして、トドメは、演出の僕の名前のすぐ隣には「作 田嶋ミラノ」。
正直「こんなことが起きてしまっていいのだろうか?」というレベルの奇跡でした。
首藤健祐さんは10年前から時々「シアターキューブリック、恐るべし」という
謎のフレーズを仰るのですが、今回の公演はまさに「恐るべし」でしたよ、首藤さん。
僕も大勢いるスタッフの一人でありまして、
舞台公演というのは、お客さんと接する「オモテ」、接しない「ウラ」、
大勢のプロフェッショナルなスタッフさんがいて初めて成り立ちます。
この方たちの作品への想いもね……、今回は企画段階、稽古段階からビンビンでした。
そういった俳優陣を含む大勢のメンバーの「想いの掛け算」があって、
ようやく密度の濃い作品が出来上がるのだということを、あらためて強く感じました。
俳優陣、スタッフ陣の、ミラノさんの想いに迫ろうとする情熱はとにかく凄かった。
みんなほんとうにありがとうございました。
今回は時節柄、劇場まで行きたくても行けない方々に向けて、
初めてオンライン配信なるものに挑戦しました。
映像で作品を発信するからには、「劇場の臨場感と映像の醍醐味両方を届けたい!」
ということで、CMクリエイターとして活躍されている松宏彰さんと、
毎公演お世話になっている、かすや舞台記録さんのタッグで、
浅草九劇さんも唸るほどのハイクオリティの作品映像をナマ配信でお届けすることができました。
演出の僕自身、このクオリティには本当にびっくりしました。
なんでこんな凄いことがナマでできるのだろう!!!と。
こうしたハイクオリティの舞台配信が、ナマ観劇の最高のPRになればいいなと思います。
そして、皆さんが安心して街へ、そして劇場へ繰り出せる時期が戻ってきたら、
どこの劇場の客席もいっぱいになったらいいな、と。
▲2020年4月1日、公演延期を決めた日、最後の通し稽古を行なった後の集合写真。
昨年春、公演が一年延期となってしまったことは、ただただ残念で、かつ、とても大変な出来事でしたが、
結果的には、この一年という時間はまったく無駄にならず、
逆に座組の結束力を高め、密度の濃い作品づくりへと向かうことができました。
願わくば収容規制のないなかで、満員のお客さんにお届けしたかった!
という気持ちは多分にありますが、
今、この時期にこの作品をお届けできた幸せのほうが何倍も勝っています。
実は、今回お客さんからいただいた多くのご感想で、びっくりしたことがあります。
「まるで舞台にミラノさんがいるようでした」
という言葉が、ほんとうにたくさん届きました。
21年前にミラノさんが演じた主人公・ルカを演じた眞実ちゃんは、
ミラノさんとは容姿がまったく異なります。
小柄のミラノさんとはむしろ真逆です。
それなのに、です。
ミラノさんが客席から僕らを見守ってくれていたとしたら、それはとても嬉しいですが、
8人のキャストたちと一緒に舞台でお芝居をしてくれていたとしたら、もっともっと幸せです。
そうだといいなあ。。
▲この画像は、配信アーカイブのスクリーンショット。
ラストシーンで、ルカが最後の言葉を呟いたあと、照らされていた照明が消える瞬間です。
眞実ちゃんの顔だけど、同時にミラノさんにも見えるんです。何度見ても。
『幸せな孤独な薔薇』。これまでもとても大切な作品でしたが、この公演を経て、
僕にとって、劇団にとって、もっともっと大切な作品になりました。
「想いのリレー」
今年の6月下旬、突然でした。
「悲しい」とさえ思えませんでした。
正直、半年経った今でも事実を受け止めきれないでいます。
それくらい、あなたは何も言わずにある日突然行ってしまいました。
ちょくちょくあなたのところへ行っては最近見たオススメの本や映画の話を聞いて、
あなたはそんなつもりは全くなかったでしょうけど、
僕はあなたからたくさんのエッセンスをもらいました。
今にして思えば、「年の離れた姉と弟」という感じだったのかも知れません。
今回の脚本も、いつにもまして自分自身との格闘の日々でした。
そんな時にいつも僕の心を落ち着かせてくれたのは、
ワープロの隣でずっと同じ顔で僕を見守り続けてくれた写真の中のあなたでした。
きっと今は僕の中のどこかでちょこんと座ってくれていると信じています。
あなたのいない初めてのクリスマス。
僕はいま、あなたから受け取った「優しい気持ち」というバトンをしっかりと握りしめています。
2003年12月上演 シアターキューブリック『サンタクロース・ドットコム!』パンフレット文章より
きっとまだ自分のなかで整理できていない出来事なのでしょう。
『幸せな孤独な薔薇』はおかげさまで無事に公演の幕をおろすことができました。
公演の企画を立ち上げてから、すでに約2年近くの時間が経っています。
その間、キャスト・スタッフ・関係者の奮闘はもちろんのこと、
多くの皆様から多くのご支援やご声援を賜りました。
そして緊急事態宣言下、50%の収容規制の公演となりましたが、
毎日多くの皆様に見届けていただくことができました。
この場をお借りして心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
劇団結成20周年公演の第一弾だった今作品。
なぜ、外部作家さんのこの作品がこうした場面で上演されたのかを今一度。
『幸せな孤独な薔薇』は、惑星ピスタチオの看板女優だった平和堂ミラノさんが、
劇団から離れ「田嶋ミラノ」となって、2000年に発表した作品。
ちょうどシアターキューブリック旗揚げと同年で、
集まったばかりの仲間たちとこのお芝居を観にいき、
終演後、僕は自分が劇場の空間に溶けてしまうんじゃないかってくらいに、
心がぐにゃぐにゃになってしまいました。
自分の中に深く深く刻まれたのでしょうね。
その後、僕は自分の脚本を何本も書いてゆくことになりましたが、
この時の感覚は無自覚的な次元で、
ずーっと自分の深いところに生き続けていたんだと思います。
2003年には、そのミラノさんが突然亡くなってしまいました。
このことは却って、ミラノさんと一緒に生きてゆくことができるようにさせてくれたのかも知れません。
その後は折々に、ミラノさんのこと、そしてこの物語を思い出しながら、
シアターキューブリックとしての歩みを重ねてきました。
この劇団は、たとえば「学生劇団から派生した、、」みたいな物理的なルーツを持ちません。
もしかすると最も近いルーツは田嶋ミラノさんであるかも分かりません。
そうした経緯で、結成20周年の集大成の公演として、この作品を選びました。
そんなふうに書くと、至って理詰めで上演作品が選ばれたのだなと感じるかも知れません。
ただ、そんな理由の一方で、僕個人が、いつかどこかのタイミングで、
この物語に登場する人々に、そしてミラノさんにもう一度会いたい……
そんな超個人的な感情があったということも、かなりの濃度で確かなことです。
その作品を上演するにあたり、集まってくれた人たちが熱すぎました。
旗揚げの頃から約20年、一緒に頑張ってきた劇団メンバー・スタッフ陣に加え、
この劇団を我が家のように慕ってくれる客演陣が今回も集まってくれました。
初主演となった眞実ちゃんも、まだ今回が2回目の出演の坂本実紅ちゃんも、
僕はまるで自分の娘みたいな気持ちで日々期待し、見守り、
逞しくなった舞台上の彼女たちの姿に、何度も泣きそうになりました。
まだまだ若手だと思っていた7年ぶり鈴木研くんも、
知らないうちに磨いていたものすごいセンスで、この作品を締めてくれました。
今回その中には、演劇人生を歩むことになった若かりし頃の僕に
多大な影響を与えた劇団、演劇集団キャラメルボックスの看板・西川浩幸さんや、
21年前の『幸せな孤独な薔薇』に出演していた首藤健祐さんの姿もありました。
あの西川浩幸さんとあの首藤健祐さんが同じ舞台に立つということだけでもものすごいことなのに、
その作品を自分が演出するなんて、ちょっと本当にどうかなっちゃいそうでした。
そして、トドメは、演出の僕の名前のすぐ隣には「作 田嶋ミラノ」。
正直「こんなことが起きてしまっていいのだろうか?」というレベルの奇跡でした。
首藤健祐さんは10年前から時々「シアターキューブリック、恐るべし」という
謎のフレーズを仰るのですが、今回の公演はまさに「恐るべし」でしたよ、首藤さん。
僕も大勢いるスタッフの一人でありまして、
舞台公演というのは、お客さんと接する「オモテ」、接しない「ウラ」、
大勢のプロフェッショナルなスタッフさんがいて初めて成り立ちます。
この方たちの作品への想いもね……、今回は企画段階、稽古段階からビンビンでした。
そういった俳優陣を含む大勢のメンバーの「想いの掛け算」があって、
ようやく密度の濃い作品が出来上がるのだということを、あらためて強く感じました。
俳優陣、スタッフ陣の、ミラノさんの想いに迫ろうとする情熱はとにかく凄かった。
みんなほんとうにありがとうございました。
今回は時節柄、劇場まで行きたくても行けない方々に向けて、
初めてオンライン配信なるものに挑戦しました。
映像で作品を発信するからには、「劇場の臨場感と映像の醍醐味両方を届けたい!」
ということで、CMクリエイターとして活躍されている松宏彰さんと、
毎公演お世話になっている、かすや舞台記録さんのタッグで、
浅草九劇さんも唸るほどのハイクオリティの作品映像をナマ配信でお届けすることができました。
演出の僕自身、このクオリティには本当にびっくりしました。
なんでこんな凄いことがナマでできるのだろう!!!と。
こうしたハイクオリティの舞台配信が、ナマ観劇の最高のPRになればいいなと思います。
そして、皆さんが安心して街へ、そして劇場へ繰り出せる時期が戻ってきたら、
どこの劇場の客席もいっぱいになったらいいな、と。
▲2020年4月1日、公演延期を決めた日、最後の通し稽古を行なった後の集合写真。
昨年春、公演が一年延期となってしまったことは、ただただ残念で、かつ、とても大変な出来事でしたが、
結果的には、この一年という時間はまったく無駄にならず、
逆に座組の結束力を高め、密度の濃い作品づくりへと向かうことができました。
願わくば収容規制のないなかで、満員のお客さんにお届けしたかった!
という気持ちは多分にありますが、
今、この時期にこの作品をお届けできた幸せのほうが何倍も勝っています。
実は、今回お客さんからいただいた多くのご感想で、びっくりしたことがあります。
「まるで舞台にミラノさんがいるようでした」
という言葉が、ほんとうにたくさん届きました。
21年前にミラノさんが演じた主人公・ルカを演じた眞実ちゃんは、
ミラノさんとは容姿がまったく異なります。
小柄のミラノさんとはむしろ真逆です。
それなのに、です。
ミラノさんが客席から僕らを見守ってくれていたとしたら、それはとても嬉しいですが、
8人のキャストたちと一緒に舞台でお芝居をしてくれていたとしたら、もっともっと幸せです。
そうだといいなあ。。
▲この画像は、配信アーカイブのスクリーンショット。
ラストシーンで、ルカが最後の言葉を呟いたあと、照らされていた照明が消える瞬間です。
眞実ちゃんの顔だけど、同時にミラノさんにも見えるんです。何度見ても。
『幸せな孤独な薔薇』。これまでもとても大切な作品でしたが、この公演を経て、
僕にとって、劇団にとって、もっともっと大切な作品になりました。
「想いのリレー」
今年の6月下旬、突然でした。
「悲しい」とさえ思えませんでした。
正直、半年経った今でも事実を受け止めきれないでいます。
それくらい、あなたは何も言わずにある日突然行ってしまいました。
ちょくちょくあなたのところへ行っては最近見たオススメの本や映画の話を聞いて、
あなたはそんなつもりは全くなかったでしょうけど、
僕はあなたからたくさんのエッセンスをもらいました。
今にして思えば、「年の離れた姉と弟」という感じだったのかも知れません。
今回の脚本も、いつにもまして自分自身との格闘の日々でした。
そんな時にいつも僕の心を落ち着かせてくれたのは、
ワープロの隣でずっと同じ顔で僕を見守り続けてくれた写真の中のあなたでした。
きっと今は僕の中のどこかでちょこんと座ってくれていると信じています。
あなたのいない初めてのクリスマス。
僕はいま、あなたから受け取った「優しい気持ち」というバトンをしっかりと握りしめています。
2003年12月上演 シアターキューブリック『サンタクロース・ドットコム!』パンフレット文章より
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